ソフトバンクは7月21日・22日に開催した「SoftBank World 2016」の中で、「IBM Watson 日本語版 ハッカソン」の過去受賞13チームで競うグランドチャンピオン大会「SoftBank World Challenge 2016」を開催した。本記事では、この大舞台で最優秀賞を受賞した弁護士ドットコムに、大会参加までの経緯や具体的な内容などを聞いた。

「Softbank World Challenge 2016」の表彰式の様子

「IBM Watson 日本語版 ハッカソン」は、IBM Watson 日本語版の活用で“人々の生活を豊かにする”ことをテーマに、出場チームがハッカソン形式で競い合うソフトバンクと日本IBMの共催イベント。2016年7月に開催された「Softbank World Challenge 2016」には、過去3大会の受賞チームが集結。計13チームの中から、第1回「IBM Watson 日本語版 ハッカソン」でIBM賞を受賞した弁護士ドットコムが最優秀賞に輝いた。

弁護士ドットコム 執行役員 CTO LegalTech Lab 所長 市橋立氏

ハッカソンへの参加経緯について、弁護士ドットコム 執行役員 CTO LegalTech Lab 所長の市橋立氏は「IBM Watsonについては昨年の夏頃から興味を持っていたのですが、残念ながら当時はまだIBM Watson 日本語ベータ版 APIのリリース前でした。そんな時、ソフトバンク経由で『ハッカソンへ参加すれば実際に触れることができる』と聞き、これは絶好の機会だと参加を決めました」と語る。

こうした経緯もあり、APIに触れたのは第1回 IBM Watson 日本語版 ハッカソンの参加時が初めて。手探り状態からスタートし、ハッカソン開催期間の2日間で簡単なデモンストレーションができるまでに仕上げたそうだ。

法律の知識レベルに応じた対話的な検索結果の絞り込みが可能に

弁護士ドットコムではIBM Watsonを用いるベースとして、同社が提供している公開型Q&Aサービス「みんなの法律相談」を使用した。みんなの法律相談は、Webサイト上に寄せられた法律相談に対し、各分野の経験豊富な弁護士が回答する無料サービスだ。その質問および回答実績は累積約150万件に上ることから、同社ではみんなの法律相談の検索機能にIBM Watsonを盛り込み、質・量ともに優れたデータを有効活用するというアイデアを思い付いた。

「キーワード検索を行うにも、法律に関する知識がなければ“正しい質問”をするのはなかなか難しいものです。そこで検索機能にIBM Watsonを盛り込むことで、知識レベルに応じた対話的な検索結果の絞り込みができるのではと考えました」と市橋氏は語る。

今回使用したWatson APIは、高機能検索エンジン「R&R(Retrieve and Rank)」、テキストのカテゴリ分類を行う「NLC(Natural Language Classifier)」、自然言語で対話的に情報を取得・判定する「Dialog」の3種類だ。

具体的な仕組みとしては、ユーザーの検索キーワードに応じて、ベストアンサーなどから加点方式でスコアリングした過去の回答をR&Rで検索し、高い確信度が得られればその内容をユーザーに提示。過去に類似の質問がなかった場合は、NLCで既存質問からカテゴリ分類を行い、確信度が高ければさらに深いカテゴリを取得してユーザーへカテゴリ別ガイドコンテンツを提示する。また過失割合や財産分与といった判別方法が定まっている場合には、Dialogで対話的に取得した情報から最適な解決策を提示する。

Watson API利用の概要

Softbank World Challenge 2016ではハッカソンの時から機能を追加し、交通事故の状況を対話形式で伝えるだけで相手との過失割合が算出できるデモンストレーションまで完成させた。みんなの法律相談という実際に存在するサービスと、大量かつ質の高いデータをIBM Watsonで最大限に活用した点が、最優秀賞受賞の理由となったそうだ。

なお、ハッカソンではサービス例としてみんなの法律相談を使用したが、現在提供中の同サービスはIBM Watsonを用いたものではないので注意していただきたい。