ラジオ放送局の未来を考える場合、注目すべきはインターネットとの融合が進むかどうかだ。地上波放送の広告費はピーク時に比べ半減しており、現状のままでかつての勢いを取り戻すのは容易ではないというのが業界関係者の見方。一方で、日本におけるネットラジオの広告市場は誕生してもいないというのが現状だ。ラジオの伸びしろがネット上にあるとすれば、その市場を開拓するのは誰か。ネットと親和性の高いコンテンツが豊富な文化放送の優位性は際立っている。

ネットラジオ時代に存在感を増すラジオ局

ネットラジオは米国をはじめとする海外で人気のあるサービスだ。米国では1兆円を超える音声広告市場を抱える巨大な経済圏を形成。聴いている人に合わせて音声広告を流すターゲティング配信の技術も一般化している。

日本ではネットラジオがようやく普及の兆しを見せはじめたところ。最近の動きとしては、TBSラジオが収益化が難しいポッドキャストの終了を決め、同サービスで育ててきたコンテンツを自社運営のネットラジオ「TBSラジオクラウド」に移行すると発表した。同社は音声広告のターゲティング配信技術を活用し、音声コンテンツの収益化に挑戦する姿勢を示している。

ネットラジオが普及すれば、既存のラジオ放送局は強力なコンテンツホルダーとして存在感を発揮することができそうだ。なかでも、アニメやゲームなどに関する番組が豊富なネットラジオ「超!A&G+」を運営する文化放送には大きな可能性を感じる。

A&Gの知見・人脈をネットで活用する文化放送

文化放送 取締役 ビジネス開発担当の片寄好之氏。同社編成局長、放送事業局長を経て2016年6月から現職。A&G番組プロデューサーとして数多くの人気番組を手がけ、イベントや番組などにも出演。リスナーからは「ダーク片寄」と愛称で呼ばれる

「A&G」とはアニメ&ゲームの略称。文化放送は20年以上も前からアニメやゲームに関連するラジオ番組を放送していたが、1996年に「新世紀エヴァンゲリオン」が一大ブームを巻き起こし、アニメ・声優バブルとでもいうべき状況が到来すると、文化放送にはリスナーとスポンサーから声優を起用した番組作りに対する要望が押し寄せた。

アニメでは決まったセリフしか話さない声優の素顔を知りたいという要望に、文化放送は番組制作で対応した。このような経緯で文化放送のA&G関連番組は増えていき、こういった番組が集まる時間帯は「A&Gゾーン」と呼ばれるようになった。「盛り上がりを狙って(A&G番組を)仕掛けた部分もあったが、外からの声が(それ以上に)強かったのが実態」。当時をよく知る文化放送の片寄氏は述懐する。先見の明でA&G関連の番組を充実させてきた文化放送が、その知見や人脈などを活用して運営するネットラジオが超!A&G+だ。