AWSで1300店舗支えるシステム刷新
6月1日から3日にかけて、AWSクラウドに関するさまざまな事例/最新技術/活用方法を紹介するカンファレンス「AWS Summit Tokyo 2016」が開催された。本稿では、同イベントにおいて、ココカラファイン 上席執行役員 経営戦略本部 企業品質部長 兼 IT開発チームマネジャーの尾池泰之氏が登壇したセッション「ココカラファインの挑戦! クラウドで実現する店舗プラットフォーム」の内容をレポートしよう。
店舗業務の混乱で店舗システム刷新が急務に
神奈川県横浜市に拠点を置くココカラファインは、ドラッグストア事業/調剤事業/介護事業を組み合わせたヘルスケア産業に携わる企業だ。2008年4月にセイジョーとセガミメディクスが経営統合してココカラファインホールディングス(HD)が誕生、2010年10月にはアライドハーツとの経営統合でココカラファインへと商号を変更。2012年11月にコダマを、2013年11月に岩崎宏健堂を子会社化したほか、2013年4月には販売子会社を統合しココカラファイン ヘルスケアを設立した。こうして大きく成長してきたココカラファインは現在、大都市圏を中心として全国で1311店舗を展開するに至っている。
その一方で、急成長を遂げた企業ならではの課題にも直面していたという。当時、同社が展開する店舗にはPOSをはじめ、会計システムや棚卸しシステム、さらには決済端末(クレジット/電子マネー)/クーポンシステム/シフト作成勤怠/教育・マニュアル/ストコン/会員システム/営業実績/グループウェアなど、実にさまざまなデバイスやシステムが混在。しかも、これらを扱う店舗スタッフの作業動線が非効率的で、本来注力すべき顧客対応にあまり時間を割けない状況に陥っていたのである。
尾池氏は「決済手段の増加など、多様化するサービスや販促と、店舗の業務はより複雑化しており、店舗スタッフが扱わなければいけないシステムも増える一方でした。その混乱は非常に深刻で、業績が2年間落ち込んだほどです。そこで、システムも業務もシンプルかつ便利になるよう、散在するシステムが集約できる新たな店舗プラットフォームの構築を検討開始しました」と語る。
新たな店舗プラットフォームの構築は、店舗業務が混乱を極める同社にとって急務だった。ベンダー選定からリリースまでの猶予は約1年で、今後どれくらいデータ量が増えるかは未知数。なおかつ、コストを最小限に抑える必要があり、こうした条件を満たせる候補として上がったのがAWS(Amazon Web Services)だったという。
経験不足という壁を越えたAWSへの信頼とメリット
実は2014年以降、同社ではワークフローシステムやオンラインショップなどさまざまなシステムをAWS環境でリプレイスしてきた実績がある。しかし、これらはいずれも比較的単純なサーバリプレースが中心で、今回のような基幹系のリプレースはまったく経験がなかった。そうした状態で、店舗プラットフォームというシビアなシステムを本当にAWSで実現できるのか不安だったそうだ。
ただし、これまでAWSを使ってきた経験から、そのメリットを十分に得られているのもまた事実だった。サイジングは構築後でも調整ができ、オンプレミスで3カ月以上かかっていた構築期間は1カ月もあれば十分。AWSに関する学習は必要だが、社内運用的にオンプレミスのライフサイクルに縛られなくなったり、初期投資を抑えて稼働後のコスト評価で方向性の見直しが行えたりする点も大きい。
さらに、尾池氏は「これまでは案件ごとに関連技術の学習を行ってきましたが、企業としてナレッジを蓄積するべく『AWSトレーニング』への参加も始めました。これにより、ナレッジが体系立てて整理され、パートナーベンダーとも対等に会話ができるようになったのです。当社のリクエストが正確に伝えられ、それがしっかりと反映されているかを共通の目線で確認できることは、AWSを使う上で極めて重要だと感じました」と語る。
こうした背景から、同社ではAWSによる新たな店舗プラットフォームの構築をスタートしたのだ。