Hewlett Packard Enterprise(HPE)は6月7日(現地時間)、米ラスベガスで開催中の年次イベント「HPE Discover 2016」で米Dockerと戦略的提携を発表した。HPEのサーバやシステムにDocker Engineをバンドルし、”Docker Ready(Dockerレディ)”として提供する。これにより、アプリケーションとインフラの両方で高い柔軟性をエンタープライズにもたらす狙いだ。

コンテナはアプリケーション実行環境をまるごと仮想化することで、アプリケーションの開発と実装が容易になる技術として注目を集めており、Dockerはブームの火付け役といえる存在だ。Gartnerによると、2018年には新しいワークロードの半分以上が、少なくともアプリケーションのライフサイクルのある段階でコンテナ化されて実装されるという。

7日、プレス発表会ではDockerのCEO、Ben Golub氏とHPEのエグゼクティブバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャー、Antonio Neri氏が提携の内容と狙いについて説明した。

左からHPEのAntonio Neri氏、DockerのBen Golub氏

Golub氏は、「2社は同じような文化。Docker技術がHPEサーバで利用できるようになることで、既存システムを活用しながら効率のよいアプリケーションの実装が可能になる」と述べた。Neri氏は「ベスト技術の組み合わせ。DevOpsとして、アジャイルな方法でのアプリケーションの開発と運用へのニーズが高まっており、これに答えるもの」とした。

2社の関係は2015年秋にさかのぼる。当時、HPEのクラウドプラットフォーム「Helion」でのDockerのサポートを発表しており、今回これをさらに拡大するものとなる。

提携の下、HPEのサーバにDocker EngineとDockerコンテナをバンドルする。顧客はこれを利用して、任意のインフラに移植できる分散型アプリケーションを作成できるという。協業は技術だけではなく、営業、マーケティング、開発、サポート、サービス、ナレッジの共有も含む。共同ソリューションを利用することで、企業はインフラ上で最大20倍の最適化が可能となり、13倍高速にアプリケーションを出荷できるという。

対象となるサーバは、「HPE ProLiant」「HPE Apollo」「HPE Cloudline」。サーバに加えて、「HPE Synergy」「HPE BladeSystem」「HPE Converged System」などのHPEのストレージ、コンポーザブルインフラでも対応するほか、エンタープライズ向けのDockerのサポートとコンサルサービスも提供する。顧客は別途Dockerをインストールや設定することなく、そのままDockerコンテナ技術を利用できるという。

これらは、HPEの主要チャネルを通じて付加価値をつけた商用ソリューションとして提供される。Dockerの商用サービス「Docker Enterprise」の共同での提供とサポート、HPEによるエンタープライズ向けDockerのサポートとコンサルサービスも行うことになっており、DockerはHPEのもつエンタープライズ顧客にアクセスできることになる。

これらに加え、Docker技術を統合・検証済みの新しいHPEのコンテナ対応技術の開発も共同で行う。これには、コンバージドシステム「HPE Hyper Converged 380」や「HPE Converged Architecture 700」、オールフラッシュアレイの「HPE 3PAR StoreSever」向けのDocker Datacenterリファレンス設計、ITインフラ管理「OneView」や「HPE SiteScope」におけるDockerの統合などが含まれる。

HPEはコンポーザブルインフラを推進しており、移植性の高いDockerと組むことはお互いの長所を補完しあうものになる、とする。DockerのGolub氏は「コンポーザブルエンプラをつくる。これにより企業はもっとアジャイルになれる」と述べた後、「デジタルの世界のソフトウェアサプライチェーンでアプリケーションを一度作成し、修正することなくサーバからサーバへ、物理から仮想/仮想から物理へ、あるOSから別のOSへ、あるデータセンターから別のデータセンターへと動かすことができる。このように高い移植性を実現できる。これに加えて、コンポーザブルシステムのような柔軟性のあるインフラがあることは補完となる」と説明した。

HPEのNeri氏はこれを受け、「アプリケーションとインフラの両方のコンポーザブル性が合体する」と付け加えた。

Dockerレディのサーバ、コンバージドシステム、コンポーザブルシステムは第4四半期に提供開始を予定している。