春の訪れを告げる“イースター(復活祭)”の季節が始まった。今年のイースターは、3月27日(グレゴリオ暦)と5月1日(ユリウス暦)。代表的なところでは、東京ディズニーランドでイースター関連イベント「ディズニー・イースター」が3月25日から83日間の日程で開催される。近年、バレンタインやハロウィンといった季節イベントの盛り上がりに多くの企業が参画して関連商品の展開やイベントの開催などマーケティング活動を行っているが、イースターは新たなブルーオーシャンになるのだろうか?

拡大する市場規模、世の中の認知も向上

最近の季節イベント市場の動向については、2015年のハロウィンの市場規模が約1220億円と2014年のバレンタインデー(約1080億円)を抜いた(日本記念日協会・記念日文化研究所調べ)ことが話題になったが、イースターの市場規模も近年大きく成長している。

市場調査会社の富士経済が調べたところによると、2016年のイースターの市場規模(予測)は約8億円。数字の上ではバレンタインやハロウィンに及ばないものの、市場の成長率はこの4年間で373.9%と今後の動向を期待させる大きな成長を続けている。今後、バレンタインやハロウィンに続くポテンシャルのある市場であるということができるだろう。街中では、小売店にイースター関連商品の専門コーナーが設置されたり、イースターではおなじみのエッグペイントを手作りするイベントが開催されたりなど、イースターを楽しもうという動きが少しずつ増えている。

一方で、消費者の認知も確実に広がっている。レシピ投稿サイトのクックパッドがユーザー2599人を対象に行った調査によると、「イースターを知っている」と答えた回答者は全体の77%。イースターにちなんで何か具体的な行動をしたという回答者も、認知している回答者のうち25%と高い数字を出している。

具体的な行動のうち最も多かったのはディズニーランドなどで開催されている「遊園地のイベントに行った(10%)」だったが、一方で「イースターエッグを作った(8%)」「関連グッズを購入した(7%)」「関連する料理を食べた(6%)」などイースターというイベントそのものを楽しもうという動きも多く、イベントへの参加意向も57%と関心が高いことがわかった。こうした調査を背景に、今後はホームパーティに関連する商品や街頭イベントなどを企業がマーケティングの舞台に活用しようという動きは加速するものと考えられる。

市場本格化に向けた課題は、楽しみ方の提案

ハロウィンの市場が急成長した例を踏まえると、このような季節イベントが市場として成功するカギとなっているのが、友人・知人や家族で楽しむというシーンを醸成すること、そしてイベントを象徴するアクティビティを生み出すことだ。ハロウィンでは、“仮装して街を歩く”という古くからある習慣が、若者を中心に盛り上がりに大きな火を付けた。しかしながら、イースターでは卵をカラフルに塗って楽しむ「エッグペイント」、イースターエッグをいろいろな場所に隠して“宝探し”を楽しむ「エッグハント」といった伝統的なアクティビティがある一方、これらは友人・知人や家族で楽しむ象徴的なアクティビティとしてまだ定着していない。イースターを“みんなで楽しむことができるイベント”と認知されることが定着に向けた課題だといえるだろう。

しかしながら、こうした定着に向けた楽しみ方の提案こそ、企業のマーケティング活動にとって大きなチャンスだということも可能だ。企業が自社の商品やサービスを絡めて楽しみ方を提案することができれば、消費者へのブランディングや市場における認知を大きく成功させる可能性があるのではないだろうか。

例えば、イースターと聞いて「ディズニー・イースター」が思い浮かぶ時点で、2010年から継続してきたイベント開催という“提案”が実を結んでいることになる。既に不二家、ロッテ、森永、ネスレといった食品メーカー、IKEAや東急ハンズ、ロフト、東急、小田急、伊勢丹といった小売店などがイースターにちなんだマーケティングを展開しているが、こうした動きがどこまで拡大するか注目したいところだ。

そもそもイースターとは、春分の日以降の最初の満月の日から数えて最初の日曜日に行われるキリスト教の風習。十字架に掛けられて処刑されたイエス・キリストが3日後に復活したことに由来するため「復活祭」と呼ばれる。卵(イースターエッグ)が登場するのは、卵が生命の誕生や復活を象徴するものとして捉えられているから。冬から春へと変わる時期に行われることから、春の訪れを喜び農業の豊作を祈る祭として多くの国で発展してきた。こうしたバックグラウンドを踏まえて、どのようなマーケティング施策が人々の心に火を着けることができるのか。イースターが消費者に欠かせない季節イベントになるかどうかは、企業の動向が大きく関わっているのかもしれない。