富士通研究所は2月16日、IoTアプリケーションに活用が期待される、振動が激しく人による判別が困難な時系列データに対して高精度な解析を可能とするディープ・ラーニング技術を開発したと発表した。
今回、最先端のカオス理論および位相幾何学を活用し、時系列データを高精度に自動で分類することができるディープラーニング技術を開発し、変動の激しい複雑な時系列データも扱えるようになった。
センサーにより観測される数値は、力学的な運動が複雑に組み合わされた結果として、表面的に現れるが、この仕組みを直接調べることは困難だという。そこで、カオス理論に基づき、データの時間変化をグラフ上にプロットしていく手法を用いることで、対応する時系列データを図形として区別することが可能となる。
上記の手法で得られた図形のまま機械学習を行うことは困難なため、同技術では、位相幾何学に基づくデータ分析手法であるトポロジカル・データ・アナリシスを用いて、図形の特徴を数値化した。この手法では一般的にイメージされる図形としての特徴ではなく、図形に含まれる穴の数や、大まかな形状を特徴として分析し、独自のベクトル表現に変換する。
この独自のベクトル表現を学習する畳み込みニューラルネットワークを新たに設計し、これらのステップを踏むことで、複雑な時系列データの分類が可能となる。
同技術を活用して、ウェアラブル機器に搭載されたジャイロセンサーの時系列データをもとに、人の運動行動の分類を行うUC Irvine Machine Learning Repositoryのベンチマークテストを行ったところ、既存手法に比べて約25%精度が向上し、約85%の精度を達成したという。
同研究所は今後、時系列データの分類技術のさらなる高精度化を進め、富士通のAI技術体系「Human Centric AI Zinrai」のコア技術として本技術の2016年度中の実用化を目指す。