さくらインターネットは2月8日、IoT(Internet of Things)サービスに必要な通信環境とインフラ基盤サービスを一体で提供する「さくらのIoT Platform」を2016年度中に提供開始すると発表した。
「さくらのIoT Platform」は、IoTサービスに必要な機能をサービスとして提供する。同社はデバイス向け通信モジュール「さくらのIoT通信モジュール」、同社のデータセンター内の閉域網に設けるデータを保存・処理するインフラ基盤を提供する。通信回線は、ソフトバンクとソラコムの2社から選択可能だ。
データ提供者は同社の閉域網にデータを送受信できる。送信したデータをパブリックデータとして閉域網に保存する場合は無償で利用できるが、プライベート領域でデータを利用する場合などは有償となる。パブリックデータとして送信されたデータは、APIを介して、有償で利用できる。
デバイスと通信モジュールの通信はUART、SPI、I2Cを介して、コマンドベースで行われる。非常に軽いため、貧弱なマイコンでも対応可能だという。提供が予定されているmbed用ライブラリ、Arduino用ライブラリ、IchigoJam用ライブラリ、Raspberry Pi(Linux)用ライブラリを利用することで、既存センサーや制御モジュールと同等に扱うことが可能になる。
通信モジュールは1万円以内で提供され、課金は同社が定める単位「Message」に対して行われ、通信モジュールや通信にかかるコストはすべてこの料金に内包される予定。1個当たりのモノに対する実質負担は数十円程度に抑えるとしている。
代表取締役 社長を務める田中邦裕氏がIoTプラットフォームを提供する背景を説明した。
田中氏は「モノがつぶやけばいいのに」という会話がきっかけだったと語った。「Twitterでは、APIで情報を統合して価値を生み出した。これからは人間よりもモノのほうがインターネットに接続する機会が増えるため、モノのタイムラインを作ることで、そこから新たな価値が生まれるようになる。Twitterの世界をモノで実現したい」と田中氏。
その一方で、IoTを実現するうえで、デバイスと通信が一体になっていないためインターネットと融合できないという課題があり、「通信」「モノ」「クラウド」をもっと簡単に接続する必要があると考えたという。
田中氏は同サービスのコンセプトが「どこでも誰でも手軽に今すぐに」であることを紹介した。
現状、IoTは、スマートフォンを介してなど、人間がいる場所でモノをつなぐことが前提となっており、つまり、人間がいないとモノを接続できないという。同社では、人間がいない場所でもモノが接続することを実現する。また、人間がいない場所でモノをつなぐにはコストの課題もあるとして、安価につなぐことも可能にする。
さらに、田中氏は「エンジニアはハードウェア、ソフトウェアなど、ジャンルごとに分断されており、スタンドアロンのIoTデバイスを作ろうと思うと、知識不足がネックとなる」と指摘。そこで、同社はハードウェア、通信環境、APIを垂直統合で提供することで、技術面でのハードルの解消を目指す。
なお、データを利用するAPI課金によって得られた利益はMessage課金によってデータを送信した人にフィードバックすることも計画しているという。「データが利用されればされるほど、インセンティブとして還元することを考えている」(田中氏)
田中氏は「利用できるデータが増えれば、データを処理する量も増え、われわれのビジネスも広がる。つまり、もっとインターネットにデータが吐き出される必要がある」と、同サービスに込める期待を語った。
サービス提供に先駆け、2016年4月より「さくらのIoT Platform α」、9月より「さくらのIoT Platform β」が提供される。「さくらのIoT Platform α」では、「さくらのIoT通信モジュール」が無償で貸与され、1000個の通信モジュールが用意される予定だ。
2月8日より、「さくらのIoT Platform α」のパートナーが開始されたが、発表会には、ソラコムなど7社のパートナーの担当者が参加し、さくらのIoT Platformとの連携について説明した。