ソフトバンクロボティクスとソフトバンクは1月27日、人型ロボット「Pepper」の法人活用事例を紹介するイベント「Pepper World 2016」を開催した(28日まで)。
イベントに合わせて法人活用が進むPepperの記者説明会が行われ、ソフトバンク 代表取締役社長兼CEOの宮内 謙氏とソフトバンクロボティクス 代表取締役社長の冨澤 文秀氏が登壇。Pepperの法人活用事例や将来の展望について語った。
人材不足を解消する救世主に?
2045年には日本の労働人口が今より30%減るという予測が示す通り、現在から将来にわたる日本全体の課題として「人材不足」が懸念されている。現時点でも、人材不足を感じている日本企業が83%に上ると説明する宮内氏は「Pepperが救世主になる」とアピールする。
10月に提供を開始した法人向けの「Pepper for Biz」は企業ごとにカスタマイズが可能で、対応アプリも増えているそうだ。特に、Pepperの顔認識機能を活用し、来客者の属性データを集めて分析できる「接客データの見える化」は大きな価値があるとのことで「それらが月額5.5万円で使える」と、宮内氏は胸を張る。
その上で、2016年は「企業のためのスマートロボット元年」と同社では位置づけ、Pepperが単なる集客ツールとしてだけではなく、接客や販売、介護の現場にも活用され、人をサポートできる存在になるという見通しを示した。
Pepper導入は500社超に
現在、Pepperを導入している企業は500社を超える。宮内氏はそうした企業から数社の導入事例を紹介した。例えば、みずほ銀行はいち早くPepperを行員として採用しており、最適な金融商品を勧めるなど、対応した顧客の10%以上をカウンターに送客しているという。同行以外にも、37の銀行や信用金庫で導入されている。
日産自動車は、女性客向けにレディー・ファースト・ショップを展開しているが、その100店舗にPepperを導入。クルマに関連した説明のほか、エンタメアプリを使って来客者を楽しませている。
ネスレ日本は、コーヒーマシンの販売スタッフとして150店舗に配置。Pepperはマシンの説明や接客データの取得に活用されており、集客効果により売上が15%上がっているという。
小売業では、イオンモールがイオンカードの説明などセールスプロモーションに活用している。また、ヤマダ電機はConcept LABI TOKYOに6台導入。日本語、英語、中国語でフロア案内や誘導を行い、主に訪日外国人客の満足度や店内回遊率の向上に貢献している。
もちろん、全国のソフトバンクショップでも稼働しており、2月末までに2000店舗に導入する予定だ。呼び込みや来客者へのヒアリングといった店員がさばき切れない細かな仕事を支援しており、従来の1.5倍の集客で販売増に貢献しているという。将来的には全店舗に導入する。
宮内氏は「Pepperはクラウドコンピューティング、AI、ロボットが合体したもの。登場してからそれほど時はたっていないが、毎日進化している」と語り、より進化した受付や過去の購入履歴を考慮した最適な商品の提案、外国人に対するスムースな多言語対応などは「すぐにでも実現できる未来」だと自信を覗かせていた。
Pepperは最新テクノロジーを体感できる存在
続いて登壇した冨澤氏は、Pepper for Bizの取り組みについて説明。現在、200社以上のパートナーがアプリを開発しており、「もっと汎用性のあるアプリ、業種別アプリ、完全にカスタマイズされたアプリなど、さまざまなアプリを出していく」と語った。
また、IBM Watsonとの提携について、「世界のITジャイアント、最新テクノロジーと提携していきたい。Pepperを中心に位置づけ、パートナーさんを通して身近に最新テクノロジーを体感できる世界にしていきたい」と意気込みを見せたほか、珍しさもあって「客寄せパンダ的なイメージ」でとらえられているPepperを、今後は「コスト削減や売上拡大など、リアルに企業に貢献していくことになる」と実理にかなった存在になる期待感を示した。
「Pepperだらけの携帯ショップ」が期間限定オープン
説明会では、受付も接客もPepperだけで行う携帯電話ショップ「Pepperだらけの携帯ショップ」のオープンも発表された。このショップは期間限定だが、複数台のPepperが来店客の呼び込み、受付、来店目的のヒアリング、商品紹介などの業務を行う。宮内社長は「個人認証やレギュレーションもあるので、契約の最終作業は人が関与するが、セールスのアクティビティはできるだけPepperでカバーしたい」と語った。
また、小泉今日子さん、広瀬すずさん、ピース・綾部祐二さん、又吉直樹さんがゲストとして登場し、Pepperだらけの携帯ショップのデモンストレーションが行われた。店員として「店長Pepper」「ご契約Pepper」「暇つぶしPepper」の3台のPepperが登場。暇つぶしPepperが言うギャグや胸のディスプレイで遊ぶゲームなどで楽しんだ。