2015年のIT業界のトレンドの1つに「IoT」がある。概念自体は新しいものではないが、企業ではIoT技術を活用したソリューションが始まり、これからさまざまな変革が起こるであろうと言われている。

そこで、AT&T モバイル&ビジネスソリューション 産業IoTソリューション担当バイスプレジデントのマイク・トロイアーノ(Mike Troiano)氏による、2016年の産業用IoTとスマートシティに関する予測を紹介しよう。

産業用IoTは2016年どうなるか?

2015年は、複数の産業の企業がオペレーションとロジスティクスの改善を目的として、モノのインターネット(IoT)によるソリューションを導入し、活用を始めた。IoTは、企業を変革し、社内におけるビジネスの仕組みや顧客との関わり方を変えていくであろうと、今や一般的に考えられている。セキュアな接続により、自動車から貨物コンテナまであらゆるものがオンライン化されており、AT&Tは2020年までに300億の「モノ」がインターネットに接続されると予測している。

300億ものモノの接続という目標を達成する上で、2016年の動向は大きな影響をもたらすだろう。筆者は、ネットワーク接続と企業向けウェアラブル端末において、新たな可能性が実現されると予測している。

ネットワークの強化と消費電力の削減

IoTでは、あらゆるものがセルラーネットワークを経由して接続されているわけではない。企業は現在、衛星、メッシュネットワーク、Wi-Fiなどの各種ネットワークを利用して、さまざまなモノを接続している。今後の方向性として、低消費電力や専用ネットワークがIoT空間で重要な役割を果たすようになる。

低消費電力のネットワーク上で稼働可能なモノは数多くある。水道の使用量を測る自治体の水道メーターでネットワーク接続されているものを思い浮かべてみていただきたい。低消費電力のネットワークなら、水道メーターのバッテリー駆動時間と寿命が延びるため、結果的に設備が長持ちします。

企業向けウェアラブル端末の安全性向上

多くのウェアラブル端末が消費者に変革をもたらした。同様の傾向が、企業向けウェアラブル端末においても見られるようになるだろう。産業分野のリモートワーカーにとって、安全性は最優先事項である。石油・ガス産業の労働者の多くは、勤務中に保護具を着用し、世界中の遠隔地で石油掘削に従事している。

例えば、作業員が周囲に誰もいない状況で頭を打ったら、衝撃センサー付きのヘルメットがそれを検知して、緊急時の対応要員に直ちに知らせるようになるだろう。企業向けウェアラブル端末は、建設、石油・ガス、公共事業といった産業の労働者向けに利用される機会が増えることが見込まれる。

スマートシティは2016年どうなるか?

「スマートシティ」は2015年に米国で実証実験が始まり、水道メーターや駐車場といったモノをネットワーク接続するというアイデアが、一部の都市に導入された試験的なプログラムで実現されている。これらのスマートシティでの実験は、最終的に一般家庭のコスト削減や、水、公共交通機関、照明などの公共資源保護に向けて、複数のソリューション・プログラムを実現する道を開くことになる。

2015年は、複数の都市で協力関係が築かれ、スマートシティ開発のために必要な政府や起業家による資源、またまったく新しい資源を結集する準備が整った。AT&Tは、2016年のスマートシティの動向として以下の3点を予測している。

最優先事項はコラボレーション

スマートシティにより、政府指導者、地域のイノベーター、起業家といった多くの団体や組織による総合的なサポートを必要とする長い道のりのスタート地点に立った。新たな都市でまた、市民に役立つアイデア実現のための戦略を主導する業界イベントで、さらに多くの協力関係が築かれることが期待される。

複数のソリューション

スマートシティの開発はまだ始まったばかりだ。都市プランナーは、さまざまなモノのネットワーク接続に関する戦略を構築するため、包括的なアプローチを採用するようになるだろう。具体的には、地域社会の利益につながる複数のソリューションの導入が模索されるだろう。

例えば、劣化したパイプラインに漏水検知の技術を導入している都市が、従来の街灯からLED照明への交換も行って、インテリジェントな照明ソリューションに備えるようになるかもしれない。都市は、一歩先を考慮した包括的な計画を立てることにより、大局を見据え始めている。

財政支援の増加

ここ数年間、スマートシティに対して米国連邦政府の補助金が増加している。今後さらに、スマートシティの開発に向けた政府の出資やインフラ債が期待できる。財政支援の追加は、早い段階で都市の体制が整えられる一助となる。

例えば、路上の機械設備や交差点の信号をアップグレードできるため、結果的にインテリジェントな道路が作られる。早期にアップグレードできる余裕のある地域は、スマートシティ開発計画を実行しやすいと考えられる。