NTTデータは8月31日、メガネ型コンピューターであるスマートグラスを用いた現場作業の支援システム(遠隔作業支援システム)を開発し、同社内のIT基盤での保守運用業務における利用を開始した。新システムは2015年度内に社外向けにも提供開始予定。同システムを含むウェアラブルデバイスを適用したシステムにより、2018年までに累計で50億円のビジネス創出を目指すとしている。

遠隔作業支援システムの画面イメージ

同システムでは、作業者はスマートグラスを着用して運用保守作業を行う。スマートグラスは、前面にカメラやマイク、眼前にディスプレイを搭載しており、画像や映像・音声を記録し、作業指示書やマニュアルといった作業に必要な情報を表示できるため、作業者は内容を確認しながら作業を行うことができるという。また、画像や映像・音声は遠隔地にいる確認者とリアルタイムで共有でき、作業で生じた不明点をその場で質問することによって迅速な解決が可能としている。

確認者はPCのWebブラウザを用いて、作業の進捗状況や、作業者が記録した作業結果に関する画像や映像・音声を即座に確認でき、遠隔地にいながら現場の作業進捗状況や作業結果を確認できるという。また、現場からリアルタイムで共有した映像に対してコメントや目印(マーカー)を付与でき、的確な作業指示が可能だとしている。

同システムは、スマートグラスを直感的かつ確実に操作可能なユーザーインターフェース(UI)、利用シーンに応じたマルチデバイスでの利用、複数の作業者の作業状況を同時に確認できる確認者用画面といった特長を持つ。

UIに関しては、スマートグラスにはキーボードやマウスなどの入力機器が無いため、操作が複雑で時間がかかるという課題があったが、同システムでは、音声認識やジャイロ操作(頭の傾きと連動させてスマートグラスのマウスポインタを動かす操作)、ジェスチャー操作機能を搭載。その結果、ハンズフリーで直観的かつ確実なスマートグラスの操作が可能になったという。

マルチデバイスでの利用については、Android搭載機器であれば、どのデバイスでも利用可能とのこと。例えば、ハンズフリー操作が必要な現場ではスマートグラスを用い、マニュアルを大きな画面で閲覧することが必要な現場ではスマートフォンやタブレット端末を用いるなど、現場や利用者に応じたデバイスの使い分けが可能としている。

確認者用画面では、確認者が同時に複数名の作業者を支援でき、結果として確認者の人件費削減が可能になるとのこと。また、作業者が複数名の確認者に支援の依頼が可能なため、異なる知識を持つ複数人の有識者から同時に作業の支援を受けることもできるという。

同社は社内IT基盤を運用している本社システム管理拠点において、2015年8月上旬から中旬の間、ハードウェア交換作業において同システムを実験的に導入したとのこと。

導入の結果、作業者の目線映像の共有によって、確認者が作業の実施状況を継続的に確認できたという。また「マーカー付与機能を用いた作業指示により、不明点を即座に解消することができた」という作業者の声や、「作業者の目線映像を確認しながら作業状況を確認することで、作業ミスを遠隔から防止することができた」という確認者の声が寄せられたとのこと。さらに、有識者を常に作業現場へ派遣する必要が無くなり、作業コストの削減効果も期待できることから、正式導入を決定したという。

今後は、同社の国内の保守運用業務における利用に加え、中国やインドなどのオフショア開発拠点や、インド・北米・ヨーロッパ・中国の海外グループ会社向けシステムのIT基盤の開発・保守運用作業においても、同システムの利用を検討しているとのこと。

さらに、同社と同様なIT基盤の保守運用業務に加え、ビル・各種装置・ガス/水道/電気/通信/道路といったインフラなどの運用・保守・点検作業など、ハンズフリー操作や遠隔地からの作業支援のニーズが高い企業に対して実証実験の提案を、2015年9月から実施するという。実証実験の結果を反映した上で、同システムの2015年度内の提供開始を予定しているとのことだ。