SAPジャパンは7月1日、日本におけるIoTの活用およびインダストリー4.0の実現を支援する協同研究開発センターの開設を発表した。あわせて、独SAP エグゼクティブ・ボード・メンバー プロダクト&イノベーション担当のバーンド・ロイケ氏が、企業の将来に対しインダストリー4.0/IoTが果たす役割などについて説明した。
ロイケ氏によると、SAPは顧客が「デジタル・トランスフォーメーション」に対応することを支援していくという。デジタル・トランスフォーメーションとは、具体的に、IoT、クラウド、モバイルデバイス、ビッグデータ、ソーシャルメディアといった技術によってもたらされる変革を言う。
SAPはデジタル・トランスフォーメーションに取り組むにあたって、「第4世代のコアアプリケーション」「ビジネスの再創造」「つながる世界」という3つの柱を据えている。
「第4世代のコアアプリケーション」は、今年2月に発表された「Business Suite 4 SAP HANA(SAP S/4HANA)」を指す。SAP S/4HANAはインメモリプラットフォーム「SAP HANA」上で全面的に構築されており、インメモリとリアルタイムによる処理を特徴とする。
ロイケ氏は「S/4では、検索のようなリアルタイムの処理が可能。そのため、データの粒度が細かくなるうえ、システムの柔軟性や意思決定のスピードも上がる」と、S/4がもたらすメリットを語った。
S/4はソリューションがモジュラー化されているため統合が可能であり、これを強みとして、今後もソリューションをモジュールとして提供していくという。
「ビジネスの再創造」については、SAPはオープンソースのHadoopで構築された分散型のビッグデータ・プラットフォームとHANA Cloud Platformをリーズナブルに接続した基盤によって、データをスマートデータに変えていくという。
ロイケ氏は、スマートデータを活用したビジネスの再創造の例として、あるコンプレッサー・メーカーが、コンプレッサーから取得したデータに基づき利用した分だけ課金するビジネスモデルを新たに構築したことが挙げられた。コンプレッサーから得たデータを活用することで、迅速な修理も実現されたという。
同日に開設が発表された、日本におけるIoTの活用やインダストリー4.0の実現を支援する協同研究開発施設「SAP Industry 4.0 Co-Innovation Center powered by COIL(Co-Innovation Lab) Tokyo」は、ドイツ本社の研究開発拠点の直轄組織「Co-Innovation Lab Tokyo(COIL Tokyo)」内に開設される。
そのため、IoTおよびインダストリー4.0に関する最新動向や先進的なソフトウェア開発事例などをいち早く紹介できるという。COILパートナーのエコシステムを活用し、実際のソリューション開発におけるPoC(Proof of Concept:機能検証)も迅速に行える。
ロイケ氏は、同施設について、「SAP Industry 4.0 Co-Innovation Center powered by COIL(Co-Innovation Lab) Tokyoでは、パートナーシップを確立して、ビジネスを創造していく。SAPは技術を提供し、その技術を活用して企業はビジネスを生み、それをSAPとその企業で再販していく。補完しあう関係を築いていく」と説明した。