ネットワーク専門メーカー・アライドテレシスが、大型商業施設やスタジアム、交通機関や教育施設などでの統合監視ソリューション「Envigilant(エンビジラント)」を発表した。

アライドテレシス EtherGRID部 部長 青木 実氏

ネットワーク専門メーカー・アライドテレシスが、大型商業施設やスタジアム、交通機関や教育施設などの統合監視ソリューション「Envigilant(エンビジラント)」を発表した。

2020年の東京オリンピックに向けて、大型施設の建設ラッシュが始まっているが、これらの施設の監視システムを、より柔軟に安く構築できるソリューションというわけだ。入退室管理、IPカメラだけでなく、放射能センサー・バイオケミカルセンサーなども追加できる。

専用監視システムよりも安く手軽に、施設での監視ソリューションを提供

「Envigilant(エンビジラント)」はアライドテレシスによる造語で、「vigilant」=危険なものに対して用心深い・注意しているという形容詞と、「En」=含んでいる・取り囲むという意味を組み合わせている。脅威に対して注意深い、いろいろなリスクを囲い込みたいという意味でつけている。

アライドテレシスでは以前から映像監視のソリューションとして「EtherGRID-VMS」を提供していた。IPカメラを使った映像監視システムでビルや公共施設で使われているが、今回の「Envigilant」は、もっと幅広く様々なセンサーを導入することで、テロなどの脅威を検出・可視化するシステムとなっている。

対応するセンサーは以下の様なものがある。

  • IPカメラ:映像監視のIPカメラ。不審者・不審物を監視

  • 入退室管理:不審者の入退室を監視

  • 放射線検出センサー:人体に危険を及ぼす放射線レベルを検出

  • バイオケミカルセンサー:人体に危険を及ぼす化学物質を検出

従来は、これらのセンサーと監視システムは、複雑な専用ハードウェアが必要であり、とても高価だった。

しかし「Envigilant」では、すべてのセンサーをIPネットワーク上に構築することで、より安く導入できる上に、複数のセンサーを可視化して脅威を検出できる。カスタマイズすることも簡単で、他のセンサーも導入可能だ。

青木氏によれば「アメリカでは銃の音を検出するセンサーの追加を検討している。様々なセンサーをIPネットワークで構築するので、低価格・短期間で導入できるのが特徴だ」とのこと。また、人の顔を判別するシステムも導入を検討しているそうだ。

各センサーは、アライドテレシスが専門家と共同開発している。放射線検出センサーは、アメリカの政府機関との共同開発。CMOSセンサーを使い、カメラでガンマ線量を計測できるIPネットワークベースのセンサーだ。一般的なIPカメラの性質を利用するため、安価に構築できるという。

バイオケミカルセンサーは大阪大学との共同研究で、2015年度の中の製品化を予定している。GLEIA(化学剤検知方式)により、柔軟に化学剤検知に対応し、生物化学兵器(サリン, マスタード, VXガス, 炭疽菌, 天然痘)も検知できる。

IT統合基盤:EtherGRIDで解析・可視化

これらのセンサー群は、IPネットワークで伝達され、サーバーで解析し、監視コンソールで表示する。

まずサーバーでの解析・ストレージは、アライドテレシスのクラウド基盤「EtherGRID」を利用する。Envigilantに必要なサーバー、ストレージ、OS、ファシリティを一体化して提供できるのが特徴だ。

そして可視化には、監視コンソールのダッシュボードを利用する。各種センサーの情報を、フロア図に表示しながら視覚的に確認することが可能で、異常を検出するとアイコンが赤になってアラートが出るほか、各センサーのステータスも詳しくわかる。

このシステムはIPネットワークを利用しているため、ビルのワンフロアから、ドーム球場などの大型施設、交通機関、教育施設にも対応できる。多種多様な化学・生物物質、放射線などのセンサーを統合することにより、危険物の内容など、現場での迅速かつ正確な状況把握が可能だ。

価格は「規模にもよるが、初期コストとして概算で一千万円ぐらいを想定している。専用システムに比べれば大幅に安い(青木実氏)」とのことだ。

2020年の東京オリンピックに向けて、テロなどの脅威への対策が重要になってきた。ネットワークセキュリティに加えて、施設の警備・脅威検知が不可欠であり、そのためには様々な監視システムが必要になるだろう。Envigilantは、オールインワンでコストも安く、かつ様々なセンサーを追加できる柔軟性もあるので注目したい。