ソフトウェアの受託開発を手掛けるニッポンダイナミックシステムズ(以下、NDS)。創業から46年となる同社は近年、IT資産管理の「e-Survey+」や「e-Inventory」、勤怠管理の「e-就業」といったパッケージソフトの開発/販売をはじめ、要求開発コンサルティング(ITサービス)の分野にも注力している。

株式会社ニッポンダイナミックシステムズ 取締役 中島隆氏

BPMを活用しさまざまなシステムと連携

そんなNDSは2015年4月、自社ERPシステムのサポート打ち切りをきっかけに、そのシステムを一新した。「現行のシステムは、受託開発業務が中心の原価管理システムでした。しかし、業績の向上とともに受託開発以外のビジネスも拡大していき、それぞれのサービスに適した個別のシステムが必要になってきたのです」と語るのは、同社で取締役を務める中島隆氏だ。

一般的に、単一のERPシステムで異なる業態の管理をすると、さまざまな“ひずみ”が生じてしまうと言われている。個々の業務との整合性がとれなくなり、データ入力のオペレーションが煩雑になって作業負荷が大きくなるからだ。しかし、サポート打ち切りという時間的制限がある中で、基幹システムを一からスクラッチ開発することは現実的ではない。

「そうしたときにアプレッソさんの開発パートナーである大阪エヌデーエスから提案されたのが、SOA(サービス指向アーキテクチャ)のシステム基盤『DataSpider BPM suite』でした。ERPですべての業務領域を包含するのは最適ではないと考えていたので、BPM(ビジネスプロセスマネジメント)を活用し、さまざまなシステムと連携できる基盤を構築する、という提案は魅力的でした」(中島氏)

作らずにつなぐ「DataSpider Servista」

NDSが採用した「DataSpider BPM suite」は、「DataSpider BPM」と「DataSpider Servista」で構成されている。DataSpider BPMは、社内のあらゆる業務プロセスをモデル化し、適切な承認フローに基づいて自動化するソフトウェア製品である。業務フローのモデリングには、業界標準記法のBPMN(Business Process Modeling Notation)のサブセットを採用。GUIベースなのでドラッグ&ドロップだけで作図できるのが特徴だ。一方、DataSpider Servistaは、異なる形式のデータを、システムの接続方法やフォーマットの違いを意識することなく連携できるソフトウェアである。さらに、DataSpider BPM suiteでは、DataSpider Servistaから、DataSpider BPMのプロセスを呼び出すことが可能で、これにより業務フローの統合化を実現できるのではないかという期待もあった。

また、DataSpider BPM suiteを採用するうえで、「コスト」「操作性」「柔軟性」「データ連携の容易性」の4つを重要なポイントとして中島氏は挙げる。

「基幹システムは全従業員が利用するので、データ入力のオペレーションが容易であることが大前提です。これは開発パートナーの大阪エヌデーエスが最も苦労したところでもあります。受注/売上入力や購買申請/承認など様々なプロセスが一貫性を持ち、操作性が同じになることは、業務効率が向上するだけでなく、手作業によるヒューマンエラーや停滞、操作の属人化といった課題も解決してくれます。さらに、稼働後の拡張性や保守性を高めるため、シンプルかつ柔軟性を持ったシステムであることも、外せない条件でした」(中島氏)

そして、一番の決め手となったのは、「データ連携の容易性」である。新システムでは全業務における会計システムに、ICSパートナーズのパッケージソフト「OPEN21 de3」を採用した。同会計ソフトと販売管理、購買管理、プロジェクト採算管理、各種管理帳票出力とのデータ連携が容易であることを重要視したのだ。さらに、既存システムで利用している勤怠管理システムや給与管理システムとのデータ連携も、大規模なシステム改修をすることなく実現できることも考慮したという。

開発からわずか5カ月、短期間でカットオーバーを実現

「DataSpider BPM suite」はコストと製品の安定性といった側面からも、NDSにとって最適解だったと中島氏は語る。冒頭で述べたように、ソフトウェアの受託開発を行うNDSは、ソフトウェア開発のプロといえる。顧客の基幹システム構築をしている立場から、何が無駄なコストや作業となるのかを十分熟知している。たとえば、年に1回しか利用しない機能を最初から作り込むことで、開発が数ヵ月延びるようでは本末転倒だ。つまり、時間をかけるべきところや次のフェーズで追加すべきところの見立てが重要となる。

中島氏は、「コアの部分はきっちり作り込み、機能は必要に応じてブラッシュアップするコンセプトで設計/開発しました」と説明する。ソフトウェア開発のプロ同士がタッグを組んで構築したシステムは、なんと開発からわずか5カ月でカットオーバーした。

新システムでは、基幹システムと会計システムを分割し、基幹システムをDataSpider BPM suite、会計システムをICSパートナーズの「OPEN21 de3」にし、それぞれが連携

将来のデータ連携にも柔軟に対応

中島氏は、「導入したばかりで、数値による具体的な効果は公開できる状況ではないが…」としたうえで、導入効果への期待として、「従業員の連帯感が生まれること」を挙げる。

ERPが業務の「結果」を軸に情報を検索するのに対し、BPMは業務のフローを探すことができる。つまり、「いつ、誰が、何を、どのぐらいの時間をかけて業務をこなしたのか」ということが可視化されるのだ。こうしたデータが蓄積されれば、業務のネックとなっている部分が詳らかになり、各従業員がどの業務に時間を割かれているのかがわかる。

「業務フローを可視化することで改善ポイントが浮き彫りになり、従業員に気付きを与えられます。『DataSpider BPM suite』で、一人ひとりが自らの業務を改善できる環境を構築したい」と中島氏はその抱負を語る。

今後は、CRMなど個別システムの導入をはじめ、経費申請や経費精算といった、まだシステム化されていないワークフローもBPM上に搭載し、連携させることも視野に入れているという。既存システムとのデータ連携は、DataSpider Servistaがもっとも得意とするところであり、まさにDataSpider BPM suiteは「スピードとコスト、そして柔軟性を満たしたシステム」というNDSの理想を具現化した、“最適解”と言えるだろう。