NTTデータは3月10日、金融機関の個人および企業・団体における社会保障・税番号制度(マイナンバー制度)への対応を支援するサービス提供に向け、社員を対象としたマイナンバー収集の実証実験の様子を公開した。

NTTデータ 金融グローバルITサービス事業部 資金証券営業企画担当 シニアスペシャリスト 前田哲也氏

実証実験に先立ち、金融グローバルITサービス事業部 資金証券営業企画担当 シニアスペシャリストの前田哲也氏が、マイナンバー制度の概要と課題、提供予定のサービスなどについて説明を行った。

前田氏は、マイナンバー制度によって課せられる義務は金融機関と一般企業によって異なることから、対応のポイントも異なると指摘した。

顧客のマイナンバーを収集することが義務である金融機関は丁寧な対応が求められるが、収集にあたっては3年の経過措置がとられる。一方、一般企業は従業員などのマイナンバーを収集することが義務であるため、金融機関に比べると障壁は少ないと思われるが、2016年度に年末調整には間に合わせる必要があり、金融機関よりは対応が急がれる。

さらに、前田氏はマイナンバー制度にまつわる現在の課題として、「できるだけ早くかつ確実に集める必要がある」「法定調書などの提出のために、すべての顧客や従業員から集めなければならない」「法令の下、高い安全性を確保して、収集・保管を行わなければならない」という3点を挙げた。

これらの課題に対し、企業や個人は「低コストで収集したいが、安全に実行できる方法の見極めが難しい」「認知度が低い」「どのレベルまでセキュリティ対策を行えばよいのかの判断が難しい」といった状況にあるという。

同社はこうした状況に対応するため、金融機関を対象とした共同利用型(BPO)によるマイナンバーの収集サービスを提供する。同社のマイナンバー収集サービスの特徴は、契約者とのやり取りを行うルートとして、郵送に加え電子チャネルを持っている点だ。

顧客は、契約者とやり取りするルートについて、往復郵送、往路郵送・復路電子、往復電子の3つのパターンから選択できる。電子ルートを利用する端末はスマートフォンとタブレットが想定されている。モバイル端末を介してマイナンバーを収集する場合、同社が顧客名簿に応じて生成したIDとPWを使ってサービスにアクセスし、マイナンバーを入力する。

同サービスでは、マイナンバー収集のほか、「郵送返信物の不備対応(不備内容確認、再番号収集対応)」「電子メール申告依頼(番号収集サービスからの申告依頼メールサービス)」「DB保管(マイナンバーと法定調書作成のための情報を含む顧客情報の保管:初年度は基本に含む、2年目以降の保管)」を、オプションとして提供する。

NTTデータが提供するマイナンバー収集サービスの概要

同社社員約170名を対象に実施した実証実験では、マイナンバー通知カードの代わりに社員の健康保険証が用いられた。健康保険証に記載の社員番号をマイナンバーとして見立て、専用スマートフォンアプリのOCR機能で読み取った。また、本人確認書類として運転免許証をOCR機能またはNFC機能を用いて読み取り、健康保険証から読み取った仮想マイナンバーと突合した。

実験会場では、スマートフォンを持っている人は、専用アプリで健康保険証を読み取るなどの作業を行っていた。また、スマートフォンが手元にない人は、説明員のスマートフォンを用いて、作業の手順について説明を受けていた。会場の画面には、読み取った仮想マイナンバーと健康保険証の社員番号を照合した結果が表示されていた。

自身のスマートフォンに専用アプリをインストールして健康保険証の番号を読み取っている様子

説明員から、スマートフォンを用いて健康保険証の番号を読み取り、本人確認書類として運転免許証を読み取る方法を聞いている人たち

専用アプリの画面もわかりやすいようで、事前に配布されたマニュアルを読んだだけで、作業を完了している人が多かったようだ。番号の照合結果も次々と表示され、処理もスピーディに行われていた。

今年10月以降、マイナンバー通知カードが配布されると言われているが、まだ不透明な部分も多く、どう対策を講じるべきか、決めかねている企業も少なくないだろう。本誌では、これからもマイナンバー制度に関連した国の動き、各ベンダーの動きを追っていくつもりだ。