ユーザーの多様な要求にどうすれば応えることができるか

企業システムはクラウドファーストの時代に突入している。大規模なシステムをクラウド化していくことは、理にかなってはいるがそれを実現するには課題もある。システムのどこまでを残し、どこまでをクラウド化するのか?互換性、セキュリティ、可用性なども含めた 非常に複雑なニーズがサービスプロバイダーやシステムインテグレータに求められている。ヴイエムウェアが、このような急務な課題解決を支援するために用意した答えが多様性とエコシステム。同社は、パートナープログラムを強化し、「VMware vCloud Air Network」へと名前を新たにした。

同社は2014年7月、パブリッククラウドソリューション(旧称VMware vCloud Hybrid Service)の国内提供を発表しており、「VMware vCloud Air」へと名前を改めて11月10日よりサービス提供を開始した。vCloud Airは、環境設定を変更することなく、オンプレミスのVMware vSphere環境とシームレスに連携することができ、最近注目されているハイブリッドクラウド環境の導入・移行を容易にする。

本プログラムへの参加パートナーは、ヴイエムウェアのソリューションを利用して自社で独自にクラウド環境を構築・サービス提供することに加え、ヴイエムウェアのパブリッククラウドサービスを活用してサービスメニューを強化することができる。

vCloud Air Networkのサービス認定(Badge)

ヴイエムウェアでは、以前からVSPP(VMware Service Provider Program)と呼ばれるサービスプロバイダー向けのパートナープログラムを提供し、パブリッククラウドサービスの構築と市場への展開を強力に支援してきた。

ヴイエムウェア株式会社 サービスプロバイダーアライアンス室 室長神田靖史氏

ヴイエムウェア サービスプロバイダーアライアンス室 室長の神田靖史氏によれば、クラウド提供者のサービスプロバイダーだけでなく、インテグレーションを行うソリューションプロバイダーやISV(独立系ソフトウェアベンダー)を巻き込んだこの新たなパートナーエコシステムを通じて、クラウドを利用するユーザーにより高い価値を提供できるという。

「現在、エンドユーザーのシステムはクラウドファーストで構築・運用することが一般的になりつつあります。そのためソリューションプロバイダーは、単純なシステム構築や開発だけでなく、クラウドサービスを含めて提供できる“クラウドインテグレータ”となることが求められます。本プログラムに参加してVMwareのテクノロジーを活用することで、ユーザーニーズへ迅速に応えることができるようになります。サービスプロバイダーだけにとどまらないエコシステムとして”Network”という言葉を用いているのはそういった思いを象徴しているのです」(神田氏)

vCloud Airはパートナーのサービスを補完する

ところで、以前からVSPPに参加してパブリッククラウドサービスを提供してきたサービスプロバイダーにとって、ヴイエムウェア自身がvCloud Airを提供することは、新たな競合となるのではないだろうか。

サービスプロバイダーアライアンス室 アライアンス マネージャー 山崎崇史氏

サービスプロバイダーアライアンス室 アライアンス マネージャーの山崎崇史氏 は、vCloud Airをうまく利用することでむしろパートナーのサービスを補完し、価値を高めるものとなるとあらためて説明する。

「例えば、災害時の事業継続対策をサービスとして利用したいという要望があるとします。しかし、巨額の投資を行ってBCP拠点を構築しても、普段は利用しないサイトに多額の利用料を要求することはできません。vCloud Airを活用することで、柔軟かつ迅速にBCPサイトをサービスとして提供できるようになるのです」(山崎氏)

ユーザーが、ある一時期だけリソースを増強したいと考えたとしよう。例えば、年末商戦のECサイトや新製品の発表を控えたメーカーサイトなどが考えられる。従来であれば、サービスベンダー側で余剰のリソースを準備しておき、要求に応じて提供する必要があった。vCloud Airであれば、サービスプロバイダー自身のvSphere環境とシームレスに連携することが可能なため、システムを増設することなくリソースを追加できる。

VMware製品を基盤としたクラウドサービスのネットワーク

もう1つの例としては、日本企業の海外展開を柔軟にサポートできるというメリットがある。国内に限定したサービスを提供しているプロバイダーの場合、ユーザーの強い求めがあっても、短期間で海外拠点を準備するのは不可能だ。vCloud Airは世界中の拠点で提供されており、既存のシステムと容易に連携することができる。

一方で、日本企業においては、パブリッククラウドサービスに重要なデータやシステムを置くことに一定の懸念を感じたり、社内規定で不可能であったりすることも多い。また、パブリッククラウドでは実現しにくい個別の要件を持っているユーザーもいるだろう。この場合は、パートナー各社が提供する独自のサービスによって、vCloud Airを補完することもできる。

サービスの多様性こそパートナーの競争力

サービスプロバイダーアライアンス室 シニアアライアンス マネージャーの竹崎悦史氏は、この多様性こそが、VMware vCloud Air Networkの強みであり、パートナーへ競争力をもたらすものだと述べる。

サービスプロバイダーアライアンス室 シニアアライアンス マネージャー 竹崎悦史氏

「ユーザーのニーズはますます複雑化しており、サービスプロバイダーやシステムインテグレータが、1社で応えることは難しくなっています。本プログラムの“ネットワーク”によって、当社とパートナー各社が強力なエコシステムを形成し、料金体系やサービスの種類・単位などを多様化することで、さまざまなニーズに応えることができるようになるのです」(竹崎氏)

ヴイエムウェアによれば、日本国内のサービスプロバイダーパートナー(VSPP)は、2013年初頭に50社ほどであったものが、2014年11月には105社まで拡大された。しかし、世界3,800社というパートナー数からすれば、決して多くはない。今回のプログラム改定によって、国内のエコシステムを増強しサービスプロバイダーやシステムインテグレータを支援していく。

「パブリッククラウドサービス市場は、今後も急速な拡大が予測されており、オンプレミスシステムとのハイブリッド環境へのニーズはますます高まります。そうした変化の中でも、柔軟かつ迅速にVMwareのテクノロジーを提供し続けることができるのはvCloud Airと本プログラムの強みです。パートナー各社と共に、日本のクラウド利用を推進していきたいと考えています」(神田氏)