スマートフォンやタブレット端末のイヤフォンジャックに小型のカード読み取り機器を取り付けてクレジットカード決済を行うサービス「Coiney」を提供するコイニーは4月10日、事業一周年を記念して、新しいオフィスをメディアに公開するとともに、同社 代表取締役社長の佐俣 奈緒子氏が2014年度の事業目標などについて発表を行った。コイニーを率いる佐俣氏は、新卒としてPayPalに入社。同社 日本法人立ち上げなどに加わった後、2011年にPayPal Japanを退職し、コイニーを創業している。
コイニー 代表取締役社長 佐俣 奈緒子氏 |
新オフィスは東京都・恵比寿。事業拡大にともなう人員増に対応するために六本木から移転し、事業一周年となる4月10日に正式オープンした。現在の社員数は約30人。
社内の4つの会議室はフラワーショップやレストランをイメージしており、モバイル決済サービスとしてCoineyがつなげる"お店とお客さま"を意識したものとなっているほか、社内ではCoineyサービスを普段から利用者の目線で使うという試みも行われている。飲料などは社員自らが設置されたタブレット端末で決済を行うようになっており、このような利用者体験を取り入れることで製品改善のスピードも上がったという。
モバイル決済サービスとしてはPayPalが提供する「PayPal Here」やTwitter創業者としても知られるJack Dorsey氏による「Square」、楽天の「楽天スマートペイ」などがある。この分野では、2013年5月、Squareが三井住友カードと提携し3.25%という決済手数料で日本に進出してくると、対抗して各社も同程度の手数料率に引き下げを発表。以降、決済利用者にとっては、身近な端末を使った手軽な決済操作に加えて、資金面でもメリットのあるサービスとなっている。また会計ソフトやレジとの連携することで事務作業の軽減にもつながっている。
日本においては、クレジットカード決済が米国ほどには浸透していないこともあって利用拡大はゆるやかではあるが、中小店舗や屋外イベントでの利用などにおいて利用を増やしている。
Coiney事業も、正式サービスを開始したこの1年は成長の年となった。四半期ベースでの売上(金額は非公開)は、サービス開始のスタートダッシュとして割り引く部分もあるが、3000%もの伸びにとなったという。佐俣氏は、2014年度の事業目標としてカードリーダー数で累計10万台の達成を挙げた。この10万台という数字は、各社サービスが出てきたとはいえ、まだ身近で見たりすることが少ないこのモバイル決済システムを「どこかでみたことがある」といったレベルで世の中に浸透させる目安の数字だという。
同社では、一周年にあわせいくつかの発表を行った。ユーザーの拡大では、Amazon.co.jpでのリーダーの販売を開始した。これまでは審査に通った利用者に同社から無料(2台目からは有料)で提供していたが、Amazon.co.jpでの販売価格は2580円。競合のSquareは自社配布に加えて店頭で販売するリーダーも事後にキャッシュバッグを行うことで実質無料で提供しているが、今回のCoineyではこのような取り組みは見送られた。そのため、複数スタッフのためにもう1台リーダ―が必要といった際の利用になるだろう。
また、利用できる端末も拡大。Nexus 7・Nexus 5、そして「予想以上にタブレットでの利用が多かった」ことからLenovoのYogaにも対応した。このほか、ソーシャルメディアによるアクティブサポートやサポート用のフリーダイヤルを新たに開設するといったサポート体制の強化も発表している。
Coiney、Square、PayPal、楽天楽天スマートペイなどプレーヤがそろったモバイル決済ソリューション。佐俣氏はここ数年が飛躍の年とみる。サービスの強みのひとつに、1万円以下の決済がサインレスで行える点を挙げるCoiney。他社も含め、決済手数料率や手軽な操作といったアピールポイントが実は横並びに近い中で、サポート体制やこのような細かい手間をさらに省くようなサービスが勝ち抜くポイントになるのかもしれない。