日立製作所は、ビッグデータ利活用の技術によりネットワークの高付加価値化を実現する「Traffic Management Solutions(トラフィックマネジメントソリューション、以下TMS)」を打ち出し、通信事業者をはじめ社会インフラ企業などに向け、順次、関連ソリューションの提供を開始すると発表した。

このソリューションは、急拡大するデータ通信のトラフィックを、今を見える化する「計測」、本質を発見する「分析」、あるべき姿を実現する「制御」のサイクルにより最適に管理し、企業活動に生かしていくためのネットワークソリューション。

具体的には、データ通信のトラフィックを計測し、目的に応じて分析・制御するTMSをコアとするICTソリューションをまとめ、その第一弾として、「トラフィック管理ソリューション」、「ネットワーク機能仮想化ソリューション」、「広域SDN連携ソリューション」、「M2Mトラフィックソリューション」の4つのソリューションを提供する。

トラフィック管理ソリューションでは、通信事業者向けに、一時的な通信品質の悪化をもたらすバーストトラフィックが発生している時間や場所をリアルタイムに検知して制御することで、安定的で快適な通信環境を実現し、QoE(利用者の満足度)の向上を図る。また、バースト時のピークトラフィックを吸収・抑制する技術を活用して、ピーク時に備えた通信設備の投入を抑え、投資コストの最適化を実現します。具体的には、パケット検査(DPI:Deep Packet Inspection)技術を活用したリアルタイム計測、日立ストリームデータ処理基盤を用いた大量データの高速分析処理、ポリシー制御技術を用いたリアルタイム帯域制御や圧縮制御といった最新の製品や技術を活用して、従来、分オーダーを要していた制御を秒オーダーで実現する制御方式を開発し、ユーザーごとのリアルタイムなトラフィック制御を実現する。

ネットワーク機能仮想化ソリューションでは、通信事業者向けに、TMSにネットワーク機能仮想化(NFV)技術を取り込むことにより、トラフィック量やサービスの利用状況を把握し、それに応じてネットワーク機能の適切なリソース配備を行う。具体例としては、EPC仮想化により、モバイルネットワーク環境のスケーラビリティ(拡張性)の確保と、設備導入やサービス提供までのリードタイムを短縮し、さらに、TMSを組み合わせることで、トラフィック量の計測、仮想EPCのリソース把握(分析)、適切なリソースの自動配備(制御)を行う。

広域SDN連携ソリューションでは、通信事業者やデータセンター事業者、データセンターを有する企業や自治体など向けに、データセンター内でのネットワーク仮想化の適用に加えて、広域SDN技術を活用することにより、複数のデータセンター間でのネットワーク帯域変更を容易にする。また、TMSを組み合わせることで、データセンター間のリアルタイムな帯域変更(制御)を可能とし、さらなるサービス提供の迅速化や、運用コストの削減を実現する。日立は、広域SDNの取組みについては、総務省が推進する研究開発プロジェクト「O3プロジェクト」に参画している。

O3プロジェクトの目的

そして、M2Mトラフィックソリューションでは、大小さまざまなパケットが大量かつ広範囲に発生するといったM2Mのトラフィック特性に応じて、きめ細かなネットワークの計測・分析・制御を実現し、さらには社会インフラの制御システムとの連携をめざす。例えば、トンネルや橋梁の監視の際、収集したセンサーデータの分析から、より詳細な状況把握が必要と判断された場合は、ネットワークを高速回線に自動的に切り替え、高画質カメラ映像などにより遠隔での状況把握を可能にし、異常時には、緊急通知により、ユーザーのデータ通信端末に自動的に異常を知らせ、さらには交通システムと連携した制御をめざす。