ネットで情報を開示し実店舗での購買に誘導するO2O(オンライン・ツー・オフライン)は、ともすれば対立関係にあるとみられがちなネットと実店舗のあり方を大きく変革するものと期待されている。O2Oは本当に新たなビジネスチャンスを生み出すのか、そしてEC(Eコマース)とクラウドはどういった関係にあるのか──ECソリューションなどを手がけるエスキュービスム 取締役 ソリューション事業部 事業部長の武下真典氏に話を聞いた。

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ECはクラウドで真価を発揮する

エスキュービスム 取締役 ソリューション事業部 事業部長の武下真典氏

エスキュービズムは、ECサイト構築パッケージ「EC-Orange(ECオレンジ)」やクラウドと連携してPOSレジの機能をタブレット端末で提供する「EC-Orange POS」といった、O2Oのベースとなるソリューションを展開している。EC-Orangeは、国内トップシェアのオープンソースのECソフトウェア「EC-CUBE」をベースに同社が独自カスタマイズしたのだ。国内市場で2位のシェアを有し、これまで450社で活用されている。

EC-Orangeのクラウド版は、ニフティのパブリック型クラウドコンピューティングサービス「ニフティクラウド」上でサービスを提供している。その背景について武下氏は次のように語る。

「かつてニフティさんが手がけていたECサイトをEC-Orangeで構築するお手伝いをしていたのですが、その時の経験から、ニフティクラウド上でEC-Orangeを稼働させてサービス提供をすることのメリットを確信できました。ECというのは、システムへの負荷が非常に読みづらいんです。例えば、テレビで商品が紹介された途端、アクセスが爆発的に伸びたりします。なので、ECにはクラウドのような柔軟なインフラが最適なんですね。特に小売業にはITに精通したスタッフがいない事業者も多いですから、何かあった時のリスクヘッジの意味でも、機動力のあるサポート体制が整っていて信頼の置けるニフティクラウドがベストの選択肢だと思っています」。


もはやO2Oは特別なことではない!

武下氏によると、ECサイトを構築した事業者が、次に手がけようとするのが店舗オペレーションと在庫管理の連動なのだという。そこで、店頭でのPOSレジ業務をタブレット端末で行えるようにして、クラウド上のECサイトと在庫管理、顧客管理システムなどを連携してしまおうと開発したのがEC-Orange POSなのである。

「O2Oというと何か特別なことのように聞こえますが、小売業は何年も前から取り組んできたことです。最初のうちこそ、レガシーなPOSレジとタブレット端末のPOSレジとは別ものだと考える人も多かったですが、今では接客を重視する大手チェーン店もタブレットPOSを導入ように時代が変わりつつあります」。

EC-Orange POSは、大手メガネ店チェーンや全国展開するアパレルチェーンなど、すでに100社で利用されており、現在も導入が進んでいる。POSレジとして使う端末も、iPadとWindows 8タブレットの両方に対応していることから、来年4月に予定されているWindows XPのサポート切れや消費税の増税と合わせてますますニーズが高まると目されている。

すでにEC-Orange の導入が完了したジュンク堂では、台湾店においてグローバル対応版のEC-Orange POSを導入予定となっている。

そんなジュンク堂のO2Oへの取り組みの詳細については、10月24日に都内で開催されるセミナー「実践企業トップが語る O2O最前線セミナー─流通革命の裏側に見るO2Oの本質とは─」での武下氏の講演「事例で知る! 全国100店舗とECを連動させたジュンク堂のO2Oインフラ」で明らかにされる予定だ。

「今はまさに“O2O花盛り”といった様相を呈していますが、本格的なO2Oの実践例はまだまだ少ないです。そうしたなか、今回のジュンク堂さんの試みはまさに本当のO2Oだと言えるでしょう。ネット書店ビジネスはアマゾンの一人勝ちだと思われがちですが、そのアマゾンよりも付加価値を提供しているのがジュンク堂さんなのです。実店舗を持つ店ならではの強みをどういうかたちでO2Oの取り組みに生かしているか──私のセミナーではそこに言及するつもりです」と武下氏は強調する。

O2Oという“武器”を手に入れた日本の書店がどのような反撃に出ようとしているのか。今後の業界動向、そしてO2Oの可能性を知るうえでも見逃せないセミナーになりそうだ。