大分県別府市にある野口病院は甲状腺疾患専門病院で、1922年(大正11年)に創立され、甲状腺疾患の治療と研究にあたってきた。最近では、副甲状腺疾患、糖尿病、耳鼻咽喉科疾患にも力を注いでいる。同病院は専門病院のため患者は全国から来院し、6割が県外からだという。

大分県別府市にある野口病院の外観。左は創立時の建物で、右は5月1日から診療を開始した新病院

ただ同病院は、大型の医療機器が設置できないことや建物の老朽化から移転を計画。今年の5月1日から新病院での営業を開始した。新病院移転の際には、ネットワークも再構築。これまでの3倍以上のネットワークスイッチを導入し、冗長性、拡張性の高いネットワークを構築している。

新病院のマシンルーム

マシンルーム内のネットギア製スイッチ

同病院が運用する主なシステムは、電子カルテシステム、物品購入システム、画像システム、自動精算システムなどだが、新病院では、患者を名前ではなく番号で管理する番号管理システムのほか、入院患者向けにベッドサイドシステムも新たに導入した。

新病院の受付フロア

診察案内板

新病院の病室

病室に設置されたベッドサイドシステム用のテレビ

野口病院では、トレーニングルームや会議室も備え、施設が充実している

システムを運用するためのサーバは約30台で、ネットワークには240台のクライアント端末と90台の監視カメラや入退出システムも接続されている。

病院内の監視カメラ

監視カメラはネットワークに接続され、PCから映像を確認できる

野口病院 企画電算室長 大越康伸氏

ベッドサイトシステムでは、各病室のテレビで病院からのお知らせが閲覧でき、入院患者を退屈させないためのVODシステムも備えている。

ネットワーク環境を大幅に増強した背景を、野口病院 企画電算室長の大越康伸氏は、「新病院のネットワークには、従来からある電子カルテなどの基幹系システムに加え、監視カメラや入退出管理など、設備系システムも接続されるようになりました。また、医療検査機器の更新サイクルも早く、ネットワーク対応が進んでいます。そのため、新システムは30年先を見据えたネットワークにしようと思いました」と説明する。

大型機器も設置された検査室

大越氏が考える30年先を見据えたシステムのポイントは、ネットワーク機器の増設に柔軟に対応できる拡張性と障害に強いシンプルな構成の2つだという。

拡張性については、スイッチの空きポートやラックの空きスペースを現在利用している数の2倍程度を確保し、今後の機器増設に対応。また、回線も32芯の光ケーブルを複数設置して、帯域に余裕を持たせている。ネットワークはすべて10G化されている。

ラックとスイッチポートは、いずれも今後、追加することを考慮し、空きに余裕を持たせている。左は1階にあるスイッチ、右はマシン室にあるスイッチ

シンプル化では、複雑な設定は行わず、システム毎に物理的に別のスイッチを配置し、スイッチの相乗りをしない構成にしている。すでに、新システムは稼動から3カ月ほど経ったが、トラブルもなく順調に運用できている。仮にトラブルがあっても構成が単純なため、切り分けや復旧も容易だ。

以前はポートがいっぱいで、なかなか機器を増設することができなかったが、ネットギアのスイッチはコストパフォーマンスが高く、より多くの機器の設置が可能なためポート数に余裕ができ、結果的にシンプルなネットワークの構築につながったという。

野口病院のネットワーク構成図

新システムのスイッチの選定にあたっては、3つのメーカーに絞り、実際に運用テストも実施。旧ネットワークでは、複数ベンダーのスイッチを混在させていたが、新システムでは、ネットギア製品に一本化した。大越氏が選定に際してもっとも重視したのは、オール10G環境に対応できるスピードと安定性だという。その結果、ネットギアのスイッチを採用。また、理由としてネットギアのサポート体制が充実している点も大きかったという。

「病院のシステムは、24時間365日止めることができません。そのため、障害が発生した場合は、原因究明よりも復旧が優先になります。ネットギアさんの『ライフタイム保証』は、こういったわれわれのニーズもっともマッチするシステムでした。また、10Gに対応し、スタック接続可能な低価格なスイッチは、ネットギアさん以外にはありませんでした」と大越氏は選択理由を説明する。

「ライフタイム保証」とは、ユーザーが対象製品を持っている間は、期間を定めずハードウェア故障に対する保証を提供する無償製品保証だ。ライフタイム保証があるため、常に予備機を保持し、障害時にはすぐに予備機に交換。それまで利用していた機器はライフタイム保証で無償交換したのち、予備機として待機させることができるのだ。ネットワークに余裕ができたため、IP電話やIPに対応した医療機器など、さらなる拡張も可能だ。

野口病院がストックしている予備のスイッチ

野口病院では大越氏も含め2名のSEが常駐。写真は野口病院のもう一人のSE 企画電算室 二宮竜三氏

30年先を見据えたネットワークについて大越氏は、「ネットワーク機器は5-6年周期で交換していく必要がありますが、システムを止めずに交換するためには、倍のスペースがないと切り換えをスムーズにできません。30年先を見据えたネットワークというのは、今後システムを拡張するための領域と、システムを更新するため領域を確保するということです」(大越氏)

また、同氏はネットギア製品について、「以前の病院は、職員が掛け持ちでシステム管理を行っていましたが、最近はシステム化が進み、当院のように専門の担当者が管理するケースが増えています。また、コスト削減に対する二ーズは高まっています。そういった意味で、機器の選定やシステム管理を自分たちで行うことで、10Gのネットワークを低コストで構築できるネットギアの製品は、われわれのシステムに最適でした」と大越氏は語った。