本当の意味で、ITシステムの高可用性(High Availability、以下HA)を確保するにはどうすればよいのか――。ビジネスにおけるITシステムへの依存度がますます大きくなった結果、システムの停止がそのままビジネスの損失につながるケースが増え、事業継続やサービスの継続が以前にも増して重要視されるようになってきた。

そうした中、注目を浴びている製品が、サイオステクノロジー(以下、サイオス)が提供する「LifeKeeper」だ。ハードウェアや仮想マシンのみならず、アプリケーションレイヤーまで監視可能な同製品は、インフラ運用者視点ではなく、ユーザー視点でサービスの死活を確認できる「真のHA製品」として評価が高い。もちろん、有事の際にはすぐさま待機系に切り替えることが可能。システム構成も、1対1のActive/Standby構成に加えて、Active/Active(相互スタンバイ)構成、N対1のスタンバイ構成などに対応しており、さまざまな企業のニーズに柔軟に応えることができる。

「LifeKeeperは多くの企業がもつシステム可用性に関する課題を解消できる製品と自負している。近年は仮想化環境にも対応し、より多くの環境で利用することが可能だ。そのような取り組みに対する認知を広めていくことで、今後より多くの企業で導入されると確信している」

サイオス 事業継続ビジネス統括の永田雅也氏はこのように振り返る。

HA製品は、障害等が発生した際にその効果を発揮するものであるため、障害が発生していない状況においては、ユーザーはその存在を意識する必要がない。同社ではこの「通常は意識されることのないソフトウェア」を普及させるためにどのような戦略を考えているのか。以下、永田氏および事業継続ビジネスプロダクトマネージャーの大野洋介氏の話を基に、販売戦略、開発戦略の両面からその取り組みを紹介する。

サイオスの強みを活かし、Linux/OSSサポートを拡充中

サイオスでは、LifeKeeperにおける2013年の戦略分野として「Linux OSS ミッションクリティカル」、「超高速ストレージ」、「クラウド環境/大規模環境」の3つを挙げている。

これらのうちサイオスが大きな強みを持っているのが「Linux OSS ミッションクリティカル」だ。

Linux OSSの適用シーンはIDC Japanの調査によると、ユーザー企業におけるOSSの導入率は25%。従業員5000人以上の大企業では37%にも上るという。またLinux OSSシステムであっても、近年は基幹業務に適用されるシーンが増大しており、その重要性に比例してHAの要件も厳しいものが求められている。

サイオスはもともとOSSの分野においては日本国内における先駆者として、1990年台からその名を馳せてきた企業である。OSS分野の経験、ノウハウは15年以上に渡る積み上げがあり、ユーザー企業からはOSSのサイオスとして圧倒的な信頼を得るに至っている。

永田氏は「Linux/OSS分野での強みをユーザーに還元するべく、様々な取り組みを行なっている」と話す。最近ではHA用のスクリプトを無償で配布する、またはLifeKeeperとその他のアプリケーションとの検証データをホワイトペーパーとして公開するといった活動を行なっている。これらの活動はユーザー企業やパートナーのエンジニアの利便性を向上することに繋がっており、同社のユーザー、パートナーへの姿勢が現れている。

普及の"谷"を越えた超高速ストレージ

続いて戦略分野として挙げられたのが「超高速ストレージ」である。

ノード単位での処理能力が限界に近づいている環境において、全体パフォーマンスの劇的な改善策として期待されているのが、「超高速ストレージ」だ。Fusion-ioに代表される超高速ストレージやSSDを導入する企業は急激に増加しており、IDCによれば2016年には2011年実績の16倍にまで出荷容量が増加すると予測されている。

この分野への取り組みについて大野氏は次のように語った。

「高速ストレージの適用対象が拡大すれば、当然HA対策の需要も増大するため、当社としても力を入れている。特にFusion-ioとの連携に際しては、各種DataBaseでのIOPS測定検証を行なっており、数値の実績を含めて公開している。同様の試みは他社でも行われているが、パフォーマンスを数値で提示しているのは当社だけだ」

またこうした動向について、永田氏は次のように付け加えた。

「新たなテクノロジーが普及する際の一般的な動きとして、最初に先進企業が採用し、追って一般企業が採用を進めていくという傾向が見られる。この『先進企業での採用』と『一般企業での採用』の間には大きな"谷"があり、これを越えられないテクノロジーは普及せずに廃れてしまう。"谷"を越えれば普及が一気に加速するが、超高速ストレージは、まさに今、この"谷"を超えるところにいると、顧客、パートナの声から実感できている。実際に超高速ストレージで高速高可用性システムを構築し、バッチ処理の所要時間を8時間から40分に短縮することに成功したという事例もある。こうした実績は、高速・高可用性システムの普及を後押しするだろう。」

超高速ストレージは、入出力の処理が多く、またサーバ台数を増やすことでは性能向上できないようなシステムで強力な効果を発揮する。また1台あたりの作業効率が上昇することでその重要性は増大し、結果としてHAが強く求められるシステムとなる。サイオスでは、そうした要件にLifeKeeperが応えられるというメッセージを全面に押し出していくという。