シンガポールのBubble Motionは、日本を含む全世界で2500万人のユーザ、多くの有名人が参加する音声メッセージサービス「Bubbly」を提供する会社だ。LINEの爆発的ともいえる成長の一方で、同社CEOのThomas Clayton氏は、このままではFacebookが失速すると警鐘を鳴らす。

LINEが米国市場で成長を加速させる理由とはなんだろうか? 同氏「なぜLINEが米国でFacebookを追い越し、成功するチャンスがあるのか」の日本語訳版を寄稿頂いた。

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私たちは、FacebookやTwitterなど米国発のソーシャルネットワークサービスに精通しています。しかし米国では、WeChatKakaoTalkLINEのような日本やアジア発のソーシャルネットワークがとてつもないスピードで成長していることは語られていません。

特にLINEは、ユーザ数もビジネス面もとてもすばらしい成長を遂げています。文化的に、国内市場をターゲットにする傾向がありましたが、ある日、LINEが太平洋を渡りその後、米国市場でも競争力をもつでしょう。LINEは、純粋なメッセージングアプリケーションとしてスタートしたものの、その後ソーシャルネットワークサービスに進化を遂げるために多くの機能を付加しました。米国でLINEがブレイクするのは、カンナムスタイルと同様に時間を要しないでしょう。

そしてその時は来ました。米国でもっとも有力なソーシャルネットワーク、Facebookはその力を失うでしょう。

人々は友人の行動や感情を表す写真、情報にあふれたニュースフィードを好みましたが、それらは変わり始めています。Facebook熱は冷めてきており、米国やヨーロッパなど、彼らが獲得した、成熟したマーケットでユーザを失っています。今や休暇中の数百もの写真をアップロードすることはかっこよいことではなく、それらは友達を飽きさせることもあり、タグ付けやキャプションを追加することも同様です。

今日では"より少なく"がいいのです。ソーシャルシェアリングをシンプルに保つことが、人々の生活やモバイルデバイスに浸透しているのです。

Facebookの没落を予測することは大胆な発言であることはわかっています。しかし、彼らがトレンドの変化についていくために軌道修正をしないなら、米国のトップソーシャルネットワークとしての座を失うことになるでしょう。

LINEのようなソーシャルネットワーク特有のウイルス的な広がりを考えると、それは、私たちが考えるよりはるかに早く起こるに違いありません。その時は結果としてLINE、または他の同様のネットワークがトップに君臨するでしょう。Facebookの最新の携帯サービスへの取り組みはFacebookホームでした。"チャットヘッド"としてスマホ画面に常駐することで、アジアのメッセージングアプリに対抗することを目指しています。が、残念なことに、Facebookホームによって、ユーザを振り向かせる程の反応はなかったようです。

ユーザインタフェース

Facebookは、"全て"の人に"全て"を提供しようとしています。ユーザ操作があまりにも雑然としています。これとは対照的に、LINEはシンプルかつ視覚的に楽しいグラフィカルなユーザインタフェースを持っています。

LINEには、ユーザが簡単にアクセスできるアクションが多々ありますが、それらは表面には現れずバックグラウンドに存在します。これらのメッセージングアプリは、まずメッセージ交換というインタラクションがあり、その後ろに様々なオプションを使えるようにしています。Twitterのような米国のネットワークが日本でファンを魅了する理由もこれでしょう。

ステッカーはスティッキー

LINEや他のアジアのソーシャルメッセージングアプリケーションによって使用されているステッカーのように、"ハマる"機能が盛り込まれたユーザインタフェースとユーザ操作は有効です。

ステッカー人気は、数十年来の日本の文化に立ち返ります。1990年代にさかのぼると、日本ではポケベル、電子メールがはじまりました。それまで、日本では個人的に手紙を書く際には、長文かつ多くの表現を用いたため、人々は、コミュニケーションをより短く、自然に、カジュアルに図ろうとする方法に困っていました

デジタルコミュニケーションは、時に送り手と受け手の意思疎通が図られず、多くの混乱を引き起こす可能性があります。また、文字だけのコミュニケーションは冷たさを感じさせることもあります。そこで、自分の感情を表現しながら、楽しめるステッカーや絵文字が好まれ成功につながりました。PathMessageMeなどの幾つかの米国のソーシャルネットワークは徐々にこれらを把握し始めているものの、アジアのサービスに追いつくための時間や方法を持っていないかもしれません。LINEにはアドバンテージがあるのです。

モバイル収益化

Facebookは、未だ携帯電話で収益化のための正しい方法を見つけるには至っていません。彼らの最新の解決策はモバイル上でフィード画面の広告を増やすことでした。しかし、それはバナー広告ではなくユーザのフィードそのものに広告を配置することでした。限られた画面スペースに広告を配置することで、モバイルユーザの操作性をダメにしないよう取り組まれましたが、私の意見になりますが、広告の束をスクロールすることは、シームレスではありません。

一方で、アジアのソーシャルネットワークは"それ"を見出しました。LINEはステッカーやそれを活かした広告により収益化する方法であるキャラクターライセンスモデルを採用しています。私の予測では、今年はすでにFacebookの携帯電話上のサービス収入のすべてを凌駕するでしょう。

オーディエンス

最後に、次に何が流行るかを図るためのバロメータとなっている10代、20代のユーザにアピールするためには。Facebookは、若いユーザを失っていると年次10-K報告書で認めました。これは、サービスがいくつかの重大な変更を加える必要があるというアラートでしょう。10代、20代は、最大のアーリーアダプターであり、インフルエンサーでもあります。LINEはこのユーザ群を見事に獲得しているのです。

結論として、アジアのソーシャルメッセージングサービスは、今日、ソーシャルシェアリングというポイント以上にシンプルさと楽しさをユーザに提供しています。Facebookが変わらない限り、アジアのソーシャルネットワークがFacebookのユーザを獲得し、大きな成功を収めるのもそう遠くはないでしょう。

Thomas Clayton,CEO of Bubble Motion Pte. Ltd.

米国シリコンバレーで6つの会社を起業した経歴をもつ。
前職では、BEAシステムズのワールドワイドテレコムビジネスグループのジェネラルマネージャを努め、全世界のテレコムビジネスに精通。さらに、米国ホワイトハウスで経済ポリシーコンサルタントとして活躍した実績をもち、また、ボクシング、U.Sナショナルチャンピオンシップで銅メダルを獲得。
ハーバード大学院(MBA)卒、カリフォルニア大学バークレー校卒