沖電気工業(以下、OKI)は4月25日、「車車間通信・路車間通信技術」を利用して災害時の緊急迂回通信路となる「災害時車両通信ネットワークシステム」を開発し、東北大学青葉山キャンパス(宮城県仙台市)での実証実験において、ネットワークインフラが損壊した2km四方内で30分以内に通信路を確保できることを検証した。

可搬型路側機を搭載した車両

本システムは、総務省が推進する「情報通信ネットワークの耐災害性強化のための研究開発」の「災害に強いネットワークを実現するための技術の研究開発」において、OKIが担当し開発したもので、東北大学、KDDI、KDDI研究所、OKIの4者が受託し共同で取り組んだ。

OKIは、ITS無線通信技術への長い取り組みのなかで開発を行ってきた「車車間通信・路車間通信技術」を用いて、災害時の緊急ネットワークとして利用可能な「災害時車両通信ネットワークシステム」を開発。このシステムは、平常時ITSサービスに利用される無線通信機器を活用して、災害時に不通となった拠点間の通信路を緊急に確保するためのアドホックネットワーク(車両搭載した無線装置により、近隣の車両同士が直接相互に接続して通信路を構築する自律分散型無線ネットワークの一種類)構築を実現するもの。車両がその機動性に加えて通信機器の電源としての役割も果たせる点からも災害時車両通信の有効性が期待できる。

たとえば、災害が発生して携帯電話が使用できなくなった場合、災害時の拠点となる防災センター、災害現場、病院、避難所などの間の通信路を確保するために、災害現場へ可搬型路側機および車載無線機を搭載した車両を出動、配置し、ネットワークを短時間で構築する。これにより、通信事業者のネットワークが不通となった場合でも、災害拠点間にて、スマートフォンなどのWi-Fi通信機能をもった端末の通信路を速やかにバックアップすることが可能となる。

耐災害ICT研究協議会により東北大学青葉山キャンパスで3月に行われた実証実験では、災害発生時に携帯電話がつながらない場合を仮定し、複数の地域ネットワークを利用して通信サービスをバックアップする「重層的通信ネットワーク」の一つとしてOKIの開発した「災害時車両通信ネットワークシステム」を用い、その性能検証を実施した。

重層的通信ネットワークの構成図

OKIは、今回の「災害時車両通信ネットワークシステム」の開発を踏まえ、次世代の協調ITS構築の技術開発を進めるとともに、本研究開発にて検証したITS無線通信の災害時利用の展開検討も進めていく。

「災害時車両通信ネットワークシステム」の構成図