情報処理推進機構(以下、IPA)は、2011年8月に「災害に対応するITシステム検討プロジェクトチーム」を機構内に発足させ、東日本大震災のITシステムへの影響やその対応について部門横断的に調査を進めてきた。

その成果として今回、2つの成果報告を公開。プロジェクトチームでは、災害への対応という共通の問題意識の下、情報セキュリティ、ソフトウェア・エンジニアリング、標準化活動等各専門分野の視点からの調査を行った。

「災害に対応するITシステム検討プロジェクトチーム活動報告 ~ 東日本大震災後の活動記録と調査の紹介」表紙

公開した2つの成果報告書は、災害に関わるIPA全体の調査結果をとりまとめた「災害に対応するITシステム検討プロジェクトチーム活動報告 ~ 東日本大震災後の活動記録と調査の紹介」 、災害発生直後に多数構築された支援のためのウェブサイトの状況をまとめた「災害対応・支援を目的としたウェブサイト等の構築・運営における技術課題に関する調査」

「災害に対応するITシステム検討プロジェクトチーム活動報告 ~ 東日本大震災後の活動記録と調査の紹介」は、災害対応の視点から行った、震災時の情報セキュリティ、震災とクラウドの関係、自治体の情報基盤における震災の影響、高回復力システム基盤の必要性等、に関する各種調査を、わかりやすく取りまとめたサマリと、これらに関係する資料や調査報告書の概要を収録。

また、2012年5月に開催したIPAグローバルシンポジウムにおける、京都大学防災研究所教授 林春男氏に災害に負けない社会のためにITが果たす役割をテーマとした講演、災害対応で活躍した専門家や有識者によるパネルディスカッションのサマリも掲載。

さらに、今回の震災で特徴的だった震災直後からインターネット上に、安否情報/物資援助/ボランティア活動など、様々な支援のためのウェブサイトが自発的に多数立ち上がり、多くの貢献をしたことを調査するために、サイト構築関係者の協力を得て、サイト公開に至るまでの状況やその後の運営に伴って直面した技術的課題についてのアンケート、ヒアリングを実施した。

約250の災害支援のためのウェブサイトを対象にアンケートを実施。また、20件の個別のウェブサイト担当者へのインタビュー記録も収録。来るべき次の災害に備えた社会的な課題として、各分野における日ごろの訓練はもちろんのこと、ITシステムの機能面・運用面での柔軟性や、政府系データの公開、いわゆる「オープンデータ」の整備などに取り組む必要のあることが明らかとなった。これらを「災害対応・支援を目的としたウェブサイト等の構築・運営における技術課題に関する調査」でまとめている。

IPAは、この2つの報告書が、災害に強い、しなやかなITシステム構築のために活用されることを期待している。