昨今、スマートフォンが急激に普及している。Googleの調査によれば、昨年の3倍の普及率で広まっており、日本のユーザーは平均して40個のアプリを端末にインストールしているなど、調査対象国の中で最多となった。この現状を見ると、スマートフォン向けのアプリを開発は、生業として成立するのではないかと考えられる。
今回は、日本全体を群馬県にしてしまう「ぐんまのやぼう」などの独特の“ゆるい”魅力を持ったスマホのゲームアプリを連発、その収入だけで生活している「RucKyGAMES」の中の人に、アプリ開発の現状を聞いてみた。
――「RucKyGAMES」は何人で運営しているんでしょうか?
2人組でやっています。ただ、絵と一部のサウンド以外はすべて僕がやっています。つまるところ、6~7割くらいは自分でやっています。
―― 以前は会社に所属して家庭用ゲームソフトの開発に携わっていたとのことですが、現在フリーランスでアプリ開発をされている理由は何でしょうか?
まず第一に、自由に動けて、会社のようなしがらみがないことですね。個人でやっている分には、「会社としてはこういうモノが出せない」ということがないので。
―― なるほど、スマートフォン向けアプリであれば、個人規模でも開発することが可能ですからね。現在、無料アプリを多くリリースしていて、数少ない有料アプリも100円前後という低価格ですが、これは何か理由があるのでしょうか?
無料アプリの方が、実は割がいいんです。クレームがあったとして「つまらない」程度ですし。一方、有料アプリは値段がたとえ85円でも「高い」「金返せ」という声が上がったりしますね。
また、無料アプリであれば、遊んでもらえばその回数だけ収入の機会(広告の表示回数)が増えると考えられるんですが、有料アプリの場合、一度ダウンロードしたら、同じユーザーからの収入はまず見込めません。
作っている方としては、そういった理由でアップデートのモチベーションは無料アプリの方が高くなります。実際は、有料アプリの方がアップデートをユーザーから強く求められる傾向が強いですね。「お金を払った」という感覚が強いせいか、有料アプリはどんなに低額でも売るのはかなり厳しいです。
―― 今までリリースした中で一番DL数が多かったゲームはどれですか?また、一番売り上げのよかったゲームはどれですか?
ダウンロード数が多かったのは、かなり初期のころにリリースした「i大富豪lite」というトランプゲームです。130万回以上ダウンロードされました。
一番「売れた」と言えるのは、先ほどの「i大富豪lite」か、パズルゲームの「GeoBlocks」ですね。厳密にアプリ1つひとつで分けて計算したことはないのですが、広告収入が主な収益源です。
―― 現状、収入はアプリ開発のみで得ていると伺ったのですが、収入はどの程度なのでしょうか?
時によって波がすごくあるんですが、一般的なサラリーマンの月収よりも多い額だと思います。
ただ、収入がまるごと「自分のお金」だという感じはあまりしませんね。税金などでかなり引かれるので、あまり儲かった感じはしないです。なので、生活水準は大して変わっていません。
―― 月間でアプリを平均何本くらいリリースしているのでしょうか? 月にオリジナルアプリを平均2本くらい作っています。個人的に月に最低1本は作りたいという自分の中のルール決めをしていて、あとは余裕があったら出すという形です。
―― 最近、ゲーム業界で大きな存在感を示しているソーシャルゲームについてご興味はありますか?
確かに存在感は大きいですね。ただ、自分では絶対に作れないとは思うんですよ、サーバーなどの整備も必要になりますし。ああいったゲーム内容をもじって、個人ベースで出来る形にしてリリースしてみたいと思っています。正面から開発するのではなく、うまく「いじる」感じにしたいですね。
―― 最後に、アプリ開発に興味を持っている読者に一言お願いします。
ちょっと黒いことを言うと、スマートフォンアプリの開発には近づかないでほしいですね。僕の市場が減ってしまうので。
何でしょう、もっと格好いいこと言った方がいいんですかね?ひとつ言えるとすれば、既存ゲームの真似でもいいので、まず作ることが大切です。
唯一無二のアイデアがあるんだとどんなに主張しても、言うだけなら酔っ払いの戯れ言とそんなに変わらないと思うので。まずカタチにしてからがすべて、だと思います。作った人と作っていない人は、1と0くらい差があるものなので。
―― ありがとうございました。
※記事中に一部、誤解を招く表現がありましたので、該当部分を削除させていただきました。