日本マイクロソフトでは、Windows Azure上でサービスを展開しているユーザー企業の代表者が定期的に情報交換するユーザー会、「Azure BDM(Business Decision Maker) Council」を今年の2月から開催している。これまで2回にわたり情報交換を行っており、3回目は4月25日に「Windows Developer Days」が開催されているホテル内で実施され、内容をプレスに公開した。
Azure BDM Councilに参加するのは、インディゴ、エムオーテックス、カブドットコム証券、宝印刷、電通レイザーフィッシュ、ワンビ、ムビチケ、ぴあ、日本交通の各企業で、アクティブ・ブリッジ 代表取締役社長 岡部恵造氏が司会・取りまとめを行っている。
過去のテーマは、第1回が「価格設定と課金方法」、第2回が「販売/マーケティング」で、今回のテーマは「ユーザーが持つ不安とその対応」だ。
まず、ワンビが不安として挙げたのが、クラウドが日本の内部統制(IT監査)に対応できていないという問題。サーバルームへの立ち入り検査が必要という場合、海外のデータセンターだと、現地に行くことが難しいという意見だ。これに対して参加者からは、現在の監査基準は、サーバを所有していることを前提に作られているが、行政の考え方も変化してきており、時間が解決するだろうという意見が寄せられた。
一方で、「いくら内部監査を厳しくしても、USBメモリによる情報漏えいなど、エンドユーザーが破ろうとすれば、簡単に突破されてしまう。現在の監査には運用に対する観点が欠けている」という意見も寄せられた。
日本交通からは、サーバの不具合でサービスが停止するのではという不安が挙げられた。同社ではiPhoneでタクシーが呼べる「日本交通タクシー配車」を提供し、クラウドを利用している。現在、アプリによる配車は全体の7%程度で、それほど大きな影響にはならないが、今後サービスが拡大した場合は影響が大きくなるとした。これに対しては、「複数に分散してリスクヘッジするのがいい」という意見が寄せられた。
そして、この日、もっとも多くの時間が割かれたのが、クラウドに対するセキュリティ上の不安だ。しかも、クラウドを利用する顧客には、「この部分」という具体的な不安材料があるわけではなく、実態がつかめないことに対する漠然したクラウドに対する不安があるという。
これに対して参加者からは、「実際何が不安なのか、具体的なものに落とし込むことが必要」、「マイクロソフトさんがコピーを3箇所に持つなど、しっかり管理されているから大丈夫と説明すれば、大抵納得してもらえる」、「クラウドもオンプレミスも差がないので、クラウドのメリットをわかりやすく説明することが重要」、「地道な啓蒙活動を重ね、セキュティのイメージを高めることが大切」などの意見が寄せられた。
そのほか、クラウドを利用してプロジェクトが失敗したらという不安を抱くユーザーがいるという課題には、「Azureであれば、オンプレミスに簡単に移行できるので、だめならオンプレミスにすればいい」、「大規模でかつ長期的に利用する場合はオンプレミスのほうがメリットがあるので、スモールスタートでクラウドを利用する場合も最初からオンプレミスへの移行を想定しておいたほうがいい」、「オンプレミスとクラウドを棲み分けを考えるべき」、「ユーザーの要求をしっかり聞いて、メリットを出せる提案力が必要」という意見が出された。
現実的な問題では、「ほんとうにコストは下がるのか」、「突然値上げされることはないのか」という不安も挙げられ、参加者からは、「実際に数十分の一になっている」、「将来の規模の見通しが立たない場合はクラウドのほうがメリットある」、「ライセンスは契約数が多いほど割安になっているので、クラウドをたくさん利用したほうがいい」という意見が寄せられたほか、マイクロソフトからは、「先日、値下げを行った」と、今後規模が大きくなれば、スケールメリットを得られるという見通しが説明された。
また、クラウドを運用するマイクロソフトに対しては、「ハード障害などの予兆があれば、アラートを出してほしい」、「トラブル時の原因究明をもっと迅速に行えるようにしてほしい」といった要望が出された。
一方、マイクロソフトからは、トラブルがあった場合は詳細を公開するなど、今後も透明性の確保・維持に努めていく、サポート体制の整備を行う、エンドユーザーも含む市場への啓蒙を行っていく、という方針が示された。