英語の百科事典「Encyclopaedia Britannica」(ブリタニカ百科事典)を発刊する米Encyclopedia Britannicaはこのほど、書籍の出版を終了することを発表した。今後は電子版にフォーカスし、参考資料としての枠を越えて知識や学習を支援していくという。

ブリタニカ百科事典の書籍版。最新版は全32巻というボリュームを誇る

百科事典の代名詞とも言えるEncyclopaedia Britannicaは、1768年にその歴史をさかのぼる。当初イギリスで発行されていたが、その後米国に移った。最新版は第15版で、全32巻というボリュームを誇る。

新方針の下、書籍版は在庫がなくなり次第提供を終了する。同社は以前から書籍出版と平行して、CD-ROM版、オンライン版、スマートフォンアプリなどデジタル形式での提供も行っており、今後はこれら電子出版にフォーカスする。電子版のメリットとして、範囲の拡大、継続的な見直しとアップデート、補足資料、全文検索、ハイパーテキストリンクなどを挙げている。

Encyclopaedia Britannicaの社長、Jorge Cauz氏は、「ミッションは書籍やデジタルなどの媒体ではなく、一般市民にとって信頼できる学術的な知識リソースであること」と記し、今後もこの重要性は変わらないとしている。同社のブログでは、「終わりと同時に始まり」と、書籍版終了が新たな時代に向けた第一歩と強調している。

英メディアのpaidContent.orgによると、書籍版の売上は1990年をピークとし、その後の米Microsoftの「Encarta」のローンチにより打撃を受け、2006年からはデジタル版の売上が主要な収益となっていたという。Microsoftは2009年にEncartaの作成・提供を終了している。

オンライン版の価格は年間69.95ドル。オンライン百科事典としては、フリーの「Wikipedia」プロジェクト(Wikimedia Foundation)がある。