三洋電機は2月4日、同社の環境技術の説明を行う「Green Technology Forum」を開催し、「環境配慮型店舗実現に向けたエネルギーマネジメントの提案」と題した説明を行った。
三洋電機 執行役員 マーケティング本部 本部長の柴田康祐氏 |
「流通業のCO2の排出量の推移を1990年度から2009年度まで見ると、近年、環境配慮ということで全体的に削減傾向にあるが、運輸や製造業を除いた"業務その他部門"は90年度比で09年度は33.6%増と大きく増加しており、他の部門以上に対策が求められる状況となっている」(三洋電機 執行役員 マーケティング本部 本部長の柴田康祐氏)という。
こうした卸小売・スーパー・百貨店は業務その他部門を事業分野別に見たCO2排出量の21%を占めており、2位の事務所・ビルの19%と合わせると40%を占める巨大なCO2排出源となっている。また、2010年4月からはいわゆる「改正省エネ法」が施行され、事業場単位の法体系から企業単位の法体系へと変更され、全体で原油換算で1500kl以上使用している企業が対象となったこともこうした比率を大きくする要因となっており、流通業界の各協会もそれぞれCO2削減の目標を掲げるほか、コンビニやスーパーなども独自の削減目標を掲げ、それを目指した取り組みを進めている。
産業/民生各部門のCO2排出量の推移。産業部門が多いが、近年減少傾向にある一方、業務その他部門の増加量は近年、石油価格高騰などの影響により石油製品消費が落ち込んだこともあり減少傾向にあるが、90年度比で見た場合、伸び率がもっとも高い分野となっている |
業務その他部門におけるCO2排出量の比率。卸小売・スーパー・百貨店と事務所・ビルの2分野で全体の40%を占める状況となっている |
改正省エネ法により規制対象が拡大された。目安としては小売店舗で約3万m2以上、ファーストフード店で25店舗以上、ファミリーレストランでは15店舗以上、コンビニでは30~40店舗以上となっている |
各流通業界の取り組み |
各企業における取り組み |
その中で、三洋電機も「エネルギーの見える化を目指した取り組みを進めている」(同)とするほか、「パナソニックグループ全体として"店舗丸ごと"をキャッチフレーズに照明や冷凍冷蔵庫などの環境を連携してコントロールすることで、店舗全体で約20%の省エネを実現するソリューションの提供を行っている」(同)とする。
見える化は、同社が提供する店舗統合管理システム「エコアシスト」によるショーケースや冷凍システムの一元管理および空調・照明の管理システム「STAIMS」を連携して管理するほか、それを各社の本部で各店舗のエネルギー使用状況の把握ができるようにしたり、三洋電機が運営する遠隔監視センター「ERMOS」によるクラウドサービスとしての温度監視などを含めたエネルギーの詳細な使用状況の確認を可能としている。
また、パナソニックグループが提供する照明環境統合コントロールとの連携により、マスターコントローラからショーケースの庫外灯、庫内灯をそれぞれ個別に自動スケジュール制御(庫内灯と庫外灯は照度調整も可能)するほか、天井照明とショーケース照明のバランスを取ることができるようになり、照度調節することで、「例えば、スーパーマーケットでは、三洋電機のみでは、エネルギー使用比率のショーケースと空調部分、全体の74%であったが、パナソニックグループとの連動により一般照明も対象となり、全体の96%を対象に省エネ化を図ることが可能となった」(同)という。
三洋電機のみの場合、スーパーマーケットのエネルギー消費の内、ショーケース関連および空調機器のみコントロール可能であったが、パナソニックグループとして一般照明もコントロール可能となった結果、全体の96%を対象にした省エネ提案が可能となった |
こうした取り組みはすでに複数のスーパーやコンビニで採用が進められており、店舗によっては同社が2010年9月に発表したCO2冷媒を採用した冷凍ショーケース用ノンフロン冷凍機システムもすでに採用しているところもある。同システムは、温暖化係数がフロンよりも低いCO2を用いて冷凍を行うことで、CO2排出量の削減や消費電力の削減、冷媒漏れによる温暖化影響を防ごうというものとなっている。
同社では、「これまで店舗に提案してきた冷凍機などのコールドチェーンに加えて、省エネや蓄エネ、創エネといったエネルギーマネジメントと連携した"つなぐ"ソリューションビジネスをパナソニックグループとの連携も含めて展開を進めていく」(同)という方針を出しており、エネルギーの見える化というソリューションを第1ステップとし、「見える化により出てきた問題点などを精査し、運用改善のメニューを店舗ごとに提案、それを元にエネルギーの利用状況の監視、分析を行うことで、状況に応じた省エネ機器の提案を行っていく」(同)とすることで、さらなるビジネスの拡大を図りたいとしている。
また、国内のコンビニ数は約4万3000店ほどだが、「コンビニ各社は今後は海外展開、特にアジア諸国への展開を表明しており、我々もそれをビジネスチャンスとしたい」(同)としており、特に中国をターゲットとして海外展開を図っていくという方針を示す。2010年度の中国のコンビニ店数は沿岸部を中心に約1万、その内、日系のコンビニは2560店程度、「これが2015年度には内陸部への出店を中心に4万店まで増加することが予測される。1/3が日系コンビニの店舗となると見ているが、それ以外の中国ローカルのコンビニもビジネスターゲットとして見ており、中国でのコンビニを中心とした省エネソリューションの拡大を狙う」(同)としており、前年度で中国のコンビニ向け売り上げ規模30億円から、「日本での省エネの実績とパナソニックグループとしての全体の力を活用することで、2015年度には4倍となる120億円へと展開したい」(同)と中国市場での成長に期待するほか、コンビニ店数の増加に歯止めがかかった感がある日本でも「見える化」を中心に単なる機器の提供ではなく、ソリューションやシステムという形で提供していくことで、「見える化そのもののチームのほか、店舗ごとの"省エネチューニング"を提案するチームやデータ分析を行い、それぞれの状況に応じた機器なども含めたトータルでの提案を行うチームなどと連携して、見える化ビジネスを50億円規模まで拡大したい」との期待を見せた。