日立製作所と鹿島建設は1月25日、建設プロジェクトで用いる流体解析システムをクラウドサービスを活用して実現し、2011年1月から本格稼働を開始したことを発表した。企業が科学技術計算システムをクラウド化することは珍しく、建設プロジェクトに用いる流体解析システムでは日本で初のケースだという。
従来、流体解析手法を用いたビル風解析や汚染物質の拡散予測などの大規模かつ複雑なシミュレーションは、建設プロジェクトごとに行っており、そのため繁忙期と通常期ではITリソースの利用頻度に偏りが生じ、ピーク時に合わせたスーパーコンピュータを自社で保有することは効率的ではなかった。
その一方、近年、オープンサーバの性能向上とグリッドコンピュータといわれる並列化処理技術の進歩が進んだ結果、従来であればスーパーコンピュータでなければ難しかった高度な科学技術計算の演算処理が実現可能となってきた。
こうした背景から、鹿島では、スーパーコンピュータの更新を契機に、流体解析システムのクラウド化を検討、約1年半の間、並列処理性能や費用対効果などについての検証を実施。結果、日立の提供するPaaS(Platform as a Service)形式のクラウドサービスをベースに、プログラムやデータ資産を一元管理する仕組みなど独自の工夫を行うとともに、日立がHPC分野で培ってきた並列・分散処理やバッチ処理のノウハウを活用することで、流体解析に求められる性能を確保しながら、高信頼・高セキュリティなクラウド環境を実現できることを確認、2011年1月からの本格稼働を開始した。
この結果、鹿島のIT資産がオフバランス化され、ITリソースの効率的な利用や維持・運用における負荷軽減が可能となる。具体的には、繁忙期と通常期におけるシステム稼働率の乖離が解消され、流体解析関連データの集約・管理を実現した。また、常に最新のIT機器を利用でき、進歩の早いオープンサーバ技術の恩恵を効果的に享受できるようになる。
なお、 鹿島では、同システムを、環境シミュレーションや広域災害予測のほか、これまで困難とされていた大規模構造物の3次元高精度シミュレーションなどに活用し、企業競争力の強化につなげていく計画としているほか、日立では、今回の流体解析システムのクラウド化をはじめとして、今後も自社の技術力とノウハウを活用し、企業向けの高信頼・高セキュリティを備えたクラウドソリューション「Harmonious Cloud」として推進していくとしている。