マイクロソフト コンシューマー&オンライン マーケティング統括本部 業務執行役員 統括本部長 高橋克之氏

マイクロソフトは9月13日、同社が提供する検索サービス「Bing」の国内向けの取り組みに関する説明会を開催した。

Bingは、以前は「Live Search」という名称で提供していた検索サービス。昨年5月より米国でのサービスを開始国内でも今年7月から正式版としての運用を始めている。米国では、Yahoo!の検索エンジンにも採用されており、現在利用シェアを拡大している最中だ。

発表会では、そのBingに関して、基本コンセプトやそれを具現化する主な機能が説明された。以下、その模様を簡単に紹介しよう。

ユーザーの"目的達成"を高速化する多彩な機能

マイクロソフト コンシューマー&オンライン マーケティング統括本部 シニアマネージャー 中村真理子氏

Bingは、検索エンジンの域を超えた「"ディシジョン(意思決定)エンジン"を提供する」というコンセプトの下に開発されたサービスだという。マイクロソフト コンシューマー&オンライン マーケティング統括本部 シニアマネージャーの中村真理子氏は「一般的な検索エンジンが、短時間で"関連するWebサイトに誘導すること"に重きを置いているのに対し、Bingでは、短時間で"ユーザーの目的を達成すること"を最大の目標にしている。そのため、Bingは検索サービスではあるが、Bingの中で解決できるのであれば解決してしまうこともある」とコメント。その主だった機能を紹介した。

最初に中村氏は、Bingの検索結果ページが他の検索エンジンの結果と異なる構成になっていることを説明した。Bingの検索結果は、「詳細を表示するというよりも、全体像をつかむためのページになっている」(中村氏)と言い、上部には「ウェブ」、「ニュース」、「画像」、「動画」など、リソースを大別するタブが現れるほか、左カラムには検索結果をジャンルごとに分類した「カテゴリ」や「関連キーワード」が表示され、すぐに情報を絞り込めるようになっている。

Bingの検索結果。ここではWebタブが選択されている。左カラムにはカテゴリや関連キワードが並んでいる

また、検索結果カラムの下部にも各カテゴリの検索結果が3つずつ表示され、わざわざ「カテゴリ」ページに移動しなくても代表的なWebサイトに直接遷移できるうえ、各検索結果の右端にカーソルを合わせると、「ホバープレビュー」と呼ばれるWebサイトのサマリを掲載したポップアップが現れ(ブラウザによっては機能しないものもある)、該当Webサイトが自分の目的に合ったものなのかを確認できる仕組みになっている。

画面右下に出ているのが「ホバープレビュー」。各検索結果の右端にカーソルを合わせるとポップアップ表示される

さらに、画像タブでは、無限にスクロールできるようになっており、いちいちページ遷移する必要がないうえ、左下には画像の絞り込み機能が付いており、「小・中・大・壁紙」などの画像サイズや、「正方形・縦長・横長」といった画像レイアウト、「写真・イラスト」の種別、「顔のみ・肩より上」の写真カットなどで限定して表示させることも可能になっている。

画像検索ページ。ここでは左下の絞り込みメニュにより、フルカラーのもののみが表示されている

加えて動画タブでは、キーワードにマッチした動画が画像付きで一覧表示されるうえ、「マウスオーバーすると、動画の肝の部分が再生される」(中村氏)と言い、閲覧しようとしている動画がユーザーの目的にあったものなのかを判定できる作りになっている。

キーワードの"属性"によって異なる検索結果ページ

もう1つ、中村氏がBingの大きな特徴として挙げたのが、検索キワードの"属性"によって異なる構成の検索結果が表示される点である。

例えば、「日本人は、テレビを長時間見る傾向にある」(中村氏)ことから、テレビ番組専用の検索結果表示機能を用意。「テレビ番組」で検索すると、検索結果カラムのトップに現在放送中のテレビ番組一覧が表示されるほか、各放送局名をクリックすれば該当放送局がこれから放送する番組表が、番組名をクリックすればその出演者や内容がをBingのサイトの中で表示する仕組みだ。

「テレビ番組」で検索した結果。中段に現在放送中の番組が表示されている

また、「有名人サンサー」と呼ばれる機能も搭載されており、例えば、「安室奈美恵」で検索した場合には、安室奈美恵のプロフィールや画像、曲をまとめた枠が検索結果の上部に表示される。

画面中央に表示されているのが「有名人サンサー」。ここでは、安室奈美恵で検索している

中村氏は「Bingは、単にURLを羅列するのではなく、いろいろな要素を取り入れてユーザーが目的を素早く達成できるよう配慮されている。たとえレスポンスが早くても、それがわかりにくければ意味がない。検索結果も、一方的に押し付けるのではなく、選びやすいかたちで表示することが大切」と説明し、改めて"ディシジョンエンジン"というコンセプトを具現化するサービスであることを強調した。

3つのエンジンで、高精度かつきめ細かな検索を実現

マイクロソフトディベロップメント サーチテクロジーセンター・ジャパン シニアリードプログラムマネージャー 鈴木慶一郎氏

中村氏に続いて登壇した、マイクロソフトディベロップメント サーチテクロジーセンター・ジャパン シニアリードプログラムマネージャーの鈴木慶一郎氏は、開発者の立場から国内で展開するBingの特徴を紹介した。

鈴木氏は、冒頭、「検索技術や音声認識といった技術は、グローバルで共通のものを利用するというのは無理。各地域のマーケットに即したものではなければ品質を保証できない」と説明。そのうえで、Bingがワールドワイドで利用する基盤の上に、地域ごとに共通のエンジンと、国ごとに開発したエンジンを加えて提供する仕組みになっていることを明かした。

日本向けのサービスでは、まず中国に本拠地を置くSearch Technology Center Asiaで開発する東アジア用のエンジンにより、スペースで単語を区切らない言語向けの解析処理を実行。さらにサーチテクロジーセンター・ジャパンで日本独自の言語特性や習慣を反映させた分析エンジンを開発し、"日本のユーザーの意図を汲んだ"検索サービスを提供しているという。

特に、日本のユーザーの意図を汲むという点には力を入れており、先述のテレビ番組機能などは、「各種のリサーチ結果を基に日本人の特性を分析して、対応機能を用意した例」(鈴木氏)だという。また、Bingの検索メニュー上部にある「ショッピング」も、ECナビをはじめとする国内の商品比較サイト運営者と協力して、日本人にとって最も有用な商品検索ページとなるよう開発を続けている。

ショッピング検索でCDアルバム「BEST FICTION」を検索した結果

また、ユーザーの意図を汲むために、キーワードの理解だけでなく、ユーザーが検索を実行した際のコンテキストやユーザー自体の理解にも努めていることを説明。ユーザーがインターネットに接続している地域の位置情報や、検索前に閲覧していたWebサイトの履歴、Webブラウザに保持された検索履歴なども参照し、最適な結果を返しているという。「テレビ番組」の検索結果では、検索リクエストを送信した地域で放送されるテレビ番組表が自動的に表示される仕組みになっているが、その背景では「検索リクエストを送信した場所の位置情報を取得し、その場所にあった結果を返している」(鈴木氏)ようだ。

さらに、そうして理解したユーザーの意図に対して適切な結果を返すために、検索エンジン側でナレッジの理解にも努めていることにも触れ、「WebドキュメントやWebサイトの構造、メタデータの理解に加え、国や業者が提供する調査データや芸能人データなど特定コンテンツの理解、日本人のユーザーが負っているタスクの理解、一般常識の理解なども同時に進めている」(鈴木)という。

鈴木氏は最後に、ユーザーが調べたいことを質問形式で入力するとその意図を理解して適切な答えを返す検索サービス『Wolfram alpha』に触れ、同サービスの精度を高めたような機能を提供していきたい旨を説明したうえで、「検索サービースはどんなに研究してもしつくせない楽しさがある」と語り、日本向け検索サービスの拡充に向け意欲的に開発を進めていく姿勢を示した。