ネットワンシステムズ 代表取締役社長 吉野孝行氏

ネットワンシステムズは8月2日、都内で記者説明会を開催し、同社代表取締役社長の吉野孝行氏が2009年度の注力分野とその成果、2010年度の事業戦略と注力分野について説明を行った。

同社は、2009年度・2010年度の共通の事業戦略として、「ネットワーク事業における差別化」、「サービス事業の拡充」、「ユニファイドコミュニケーション事業の促進」、「データセンター/仮想化事業の促進」という4つの柱を掲げている。

同氏はまず2009年度の主な事業について話した。ネットワーク事業におけるトピックとしては、「ブロケードとの戦略的業務提携」が挙げられた。両社はそれぞれの検証センターを連携させて共同検証などを行っている。現在、その成果をまとめた資料を公開する段階にあり、今後は日本の顧客を検証センターに招きたいという。

昨年の同社の注目すべき活動に「クラウド・ビジネス・アライアンスの設立」がある。同氏は、同団体を設立した目的について、「クラウド・ビジネス・アライアンスを設立する前、クラウドコンピューティングはマーケティングばかり先行していて実態が伴っていなかった。そこで、ICT市場の活性化と環境活動への貢献といった観点からもオープンなクラウドを実現すべく、クラウド・ビジネス・アライアンスを設立した」と説明した。

同団体ではすでにビジネスの事例や企業のクラウドコンピューティングの支援の案件が発生しており、発表会では企業名・プロジェクト名などを挙げた形で紹介された。「顧客から公開の許可が取れているもの事例のみ公開しており、実際はその数倍の案件がある」と同氏。

クラウド・ビジネス・アライアンスの概要と活動状況

クラウドといった観点からは、社内の基幹業務システムを自社構築のプライベートクラウドに移行していることが紹介された。フェーズ1では、物理サーバが60%、ラックスペースが67%、消費電力が49%削減され、全面稼働となる今年12月には物理サーバ数が196台から33台に減る予定だという。

また、クラウドサービスの提供にあたり、エクシードを関連会社とし、両社でクラウド/仮想化の案件の提案・構築・運用を実施している。今では、エクシードの80%の案件が同社グループのものとなっている。

同氏はクラウド市場について、「クラウドを示す"所有から利用へ"という表現は昔から使い古されている。昔と差があるとすれば、"ネットワーク"と"省電力機能がすぐれたサーバ"だろう。LANとWANが使えるようになってきた。ただ、今クラウドベンダーとしてもてはやされているSalesforceやGoogleは真にユーザーのニーズにこたえているとは思われない」と指摘した。

同社は2010年度、ユーザーや市場のニーズにこたえるべく、「次世代のデータセンターのアーキテクチャの提供」、「タブレットデバイスを活用したワークスタイルの提供」、「クラウド・ビジネス・アライアンスの活動」などを行っていく。

次世代のデータセンター・アーキテクチャとして、シスコシステムズのネットワーク機器をベースとしたバックボーン上に、Tier1のWebサーバ、Tierアプリケーションサーバ、Tier3のデータベースサーバ、ストレージを、アプリケーションサーバとデータベースサーバを仮想化した形で提供する。

タブレットデバイスによるネットワークにおいては、同社はVPNや暗号化といったセキュリティ対策やモバイルブロードバンドゲートウェイの提供などを行っていく。「すでに、NTTドコモのLTEサービスとフェムトセルサービスに、当社が米ストークのバイルブロードバンド向けマルチアクセスゲートウェイを提供することは発表している」

クラウド・ビジネス・アライアンスは今年9月にいったん活動を締めくくり、10月より新たな形態活動を行う。同氏は、「10月からは"クラウドの市場形成"と"ビジネスモデルの構築"に注力して、活動を行っていきたい」と述べた。

同社はその成り立ち上、これまではネットワーク事業を根幹としてきたが、今後はプラットフォーム事業の拡大に力を入れていく。「ネットワーク市場は4,000億円から5,000億円と言われているのに対し、プラットフォーム市場は1兆5,000億円と言われており、これからを担う市場と言える。利益率の改善を図るためにも、同市場に注力していく」と同氏。次世代のデータセンター・アーキテクチャへの取り組みはプラットフォーム市場の拡大のための策でもある。