三洋電機は6月15日、国内市場の太陽電池の需要に対応するため、二色の浜工場(大阪府貝塚市)、滋賀事業所(滋賀県大津市)の「HIT太陽電池モジュール」の生産能力を増強することを発表した。またセルの生産能力も増強され、2010年度末にはHIT太陽電池セルの生産能力が現状(340MW)の約2倍となる600MW規模へ引き上げられる。

国内では、二色の浜工場がセルとモジュールの生産、島根三洋電機がセル生産、滋賀工場がモジュール生産を行っている。

三洋電機の太陽電池の生産体制

二色の浜工場はC棟が2010年度末までに稼働を開始する予定で、年間のセル生産量が210MWから345MWに、年間のモジュール生産量が35MWから40MWに引き上げられる予定。6月から増産設備が稼働する予定の島根三洋電機では年間のセル生産量が130MWから220MWに、また、滋賀工場では年間のモジュール生産量が100MWから250MWに引き上げられる予定。

また、モジュールを生産するハンガリー工場では、2010年度上期から増産を開始する予定で、年間生産能力は165MWから315MWに引き上げられる予定だ。

国内の太陽電池の生産能力を増強した2010年度の新計画

三洋電機 執行役員 ソーラー事業部長 前田哲宏氏

執行役員 ソーラー事業部長を務める前田哲宏氏は、同社の最新技術が採用された製品として、「HIT N230」を紹介した。同製品には、セルの効率化技術、新タブデザイン、光閉じ込め技術が採用されており、18.2%のモジュール効率と20.7%のセル効率を実現している。

高性能化への取り組みとして、HIT接合の最適化による高電圧化・高電流化・低抵抗化、集電極化の最適化による高電流化と低抵抗化、光学的設計の最適化による高電流化が実現されている。また、タブは幅を細線化することで受光面を拡大し、フィンガーとの間の電気ロスが低減されているほか、光閉じ込め技術では光の入射時の反射・散乱を低減している。

同シリーズは欧州仕様で、2010年秋ごろに発売が予定されている。

タブのデザインが刷新された「HIT N230」

同氏はさらに同社における「次世代太陽電池」の開発コンセプトの説明も行った。「次世代太陽電池の開発コンセプトでは、セル変換効率を23%以上、2013年度より商品化、構造はHIT構造、生産場所はパナソニックの尼崎工場を第一候補としている」

開発コンセプトでは商品化の次期を2013年度としているが、パナソニックとの共同開発によってできれば2012年度中に商品化を進めたい方針だという。同氏は、「太陽電池における差別化の要因に価格力と変換効率の高さなどがあるが、価格面では中国には勝てない。当社としては変換効率で勝負していきたい」と述べた。

パナソニックと相互のリソースを活用することで、2015年にはグローバルトップ3を目指すという。