パナソニックグループは、三洋電機が開発/生産したHIT太陽電池モジュールを搭載した太陽光発電システムを、7月1日から発売。太陽電池事業に本格参入すると発表した。同グループが持つ家電、電材、住建の各販売ルートを活用。エコキュート、IHクッキングヒーター、薄型テレビ「VIERA」、ライフィニティなどとともに、環境から差別化した「家まるごと」の提案を加速する考え。2012年度には、2009年度比3.6倍となる450MWを生産。国内シェアナンバーワンとなる35%のシェア獲得を目指す。

パナソニックグループは創エネ、省エネ、蓄エネ、エコマネの観点から家まるごとを提案する

パナソニックは6重点事業を推進するなかで、エナジーシステムをフラッグシップ事業に位置づける

2012年度には国内シェア35%の獲得を目指す

パナソニック 代表取締役 副社長 坂本俊弘氏

パナソニック 代表取締役 副社長 坂本俊弘氏は、「パナソニックと三洋電機のコラボレーション第1号製品となるのが今回の太陽光発電システム。この分野は、パナソニックの強みが最も生かせる分野のひとつであると認識している。パナソニックは、エナジーシステム事業をフラッグシップ事業へと育てあげる考えであるものの、これまでは創エネの太陽光発電はグループ外から調達する必要があった。ジグソーパズルの最後のピースがはめ込まれたように、家まるごとの基本骨格が整った。これにより、創エネ、省エネ、蓄エネとエコマネを加えた提案が可能になる」とした。

さらに、「国内トップシェアのオール電化、省エネ家電、およびエネマネ技術を持つパナソニックと、国内トップシェアの家庭内配線インフラ機器、建材・電材技術を持つパナソニック電工、そして、世界最高水準の変換効率を持つ三洋電機の太陽光パネルによるシナジー効果が発揮できる」と語った。

太陽光発電システムがパナソニックと三洋電機の第1弾コラボレーション製品となる

パナソニック、パナソニック電工、三洋電機のシナジー効果

パナソニック電工 常務取締役 井戸正弘氏

また、パナソニック電工 常務取締役 井戸正弘氏は、「太陽電池の国内出荷量は、2008年度比で、2009年度は2.6倍と旺盛な需要だったが、2012年度はさらに5.5倍にまで拡大する。2009年1月から復活した補助金制度が、2010年度も401億円の予算が計上され、さらに余剰電力買い取り制度が10年間の固定制度としてスタート。これらが太陽光発電システムの普及を後押ししている。今回のHIT太陽電池は従来に比べて2.4%の出力向上を図ることで、16.8%のモジュール変換効率を実現した。夏場でも高出力が得られる優れた温度特性により、結晶系太陽電池に比べてピーク出力は約10%向上している。また、省スペース、軽量化を図っており、小型の屋根が多い日本の住宅に適した製品となっている」などとした。

新製品では、既築向けの屋根置きタイプに加えて、野地板に直接設置できるパナソニック電工独自の工法を用いた新築向けの野地ぴたFタイプを用意。屋根との一体感による優れたデザイン性、瓦を不要にする屋根全体のコストダウンが図れるなどのメリットがあるという。

パナソニックグループが投入するHIT215

野地板にも直接設置できるタイプも用意。デザイン性にも優れ、瓦が不要というメリットがある

変換効率は世界最高水準の16.8%を達成している

さらに、井戸常務取締役は、「国内フルチャネルを活用した強い販売網を生かし、業界における圧倒的プレゼンスを確立する」として、5,600店舗のスーパーパナソニックショップをはじめとする2万1,000店舗の家電チャネル、全国6万1,000店舗を誇る住宅設備建材チャネル、全国6万7,000店舗を誇る電気工事店チャネルを活用。パナソニック電工に発足した110人体制のエナジーソリューション営業推進本部を通じて、営業支援体制を整える。

そのほか、全国65カ所のショールームで体験できるようにするほか、販売、施工に必要とされるパネル割り付け図、配線系統図などのツールや、新エネぴた2010による光熱費シミュレーションツールの提供などを展開。また、「安心して施工できる施工店を育成することが重要な課題」として、全国7カ所にオール電化・太陽光発電システム研修センター「エンジーソリューションラボ東京」を設置。2012年度までに全国5,000店舗の施工店教育を実施する。さらに、新10年保証制度を設け、機器に関する瑕疵保証、自然災害保証を、全国47都道府県181拠点を通じて行う。

家電チャネル、住宅設備・建材チャネル、電気工事店チャネルを活用

全国のショールームでも体験できる環境を用意

販売店に見積もりや提案用ツールを提供

施工を行う施工店の育成が重要なポイントだとする

新たに10年間の新保障制度を導入

三洋電機 執行役員 ソーラー事業部長 前田哲宏氏

一方、三洋電機 執行役員 ソーラー事業部長 前田哲宏氏は、HIT太陽電池の技術的優位性について説明。「当社独自のハイブリッド型HIT太陽電池は発電性能を左右するPN接合面がきれいな界面で形成されており、多結晶や単結晶シリコンに比べて欠陥によるロスが少なく、高い変換効率を実現。年度内には20.0%の変換効率を実現したモジュールを量産できるほか、研究段階ではすでに23.0%を実現している。また、変換効率において温度依存性が少なく、夏場の高温時でも出力低下が少ない。さらに1992年7月から日本初の実生活逆潮流有り太陽光発電システムを稼働しており、17年間に渡って安定した年間発電量を達成しているという長期信頼性もある」とした。

また、「次世代太陽電池の垂直立ち上げに向けて、パナソニックが持つ商品/工程設計、開発手法、イタコナなどの原価低減活動と、三洋電機のHIT高効率化技術、高信頼性を組み合わせ、生産性向上と新技術開発の加速と大幅なコストダウンにつなげる」とした。

世界最高水準の変換効率を持つHIT太陽電池

2010年度中までに21.0%の変換効率としたものを商品化。さらに次世代太陽電池の開発にも取り組む

世界最高水準の変換効率を持つHIT太陽電池

新エネぴた2010は、太陽光発電システムを導入した場合の効果についてシミュレーションする。年間24万円かかっていた光熱費が年間2万4,360円の収入に逆転する