アクセンチュアはこのほど、「大転換期のグローバル戦略―成熟期を迎えた日本企業におけるマーケティング」というテーマで、記者説明会を行った。同説明会では、急速に成長を遂げている新興市場であるインドと中国を、成長が鈍化しつつある日本企業はいかにして攻めるべきかについて解説が行われた。
執行役員兼経営コンサルティング本部 統括本部長兼戦略グループ アジア・パシフィック統括 マネイジング・ディレクターを務める西村裕二氏は、市場が多極化とグリーン化によって大きく転換するなか、日本企業が成功するためのポイントとして以下の3点を挙げた。
- オペレーティングモデルの確立
- サスティナビリティの考慮
- 新興国開発製品のグローバル展開
「ハイパフォーマンス企業と呼ばれる成功企業の多くは、事業を絞り込んでプラットフォームを確立したうえで製品・サービスの多様化を図るという共通した成長パターンを持っている。またGEやグーグルなど、グローバルで成功している企業はグリーンを軸に事業機会を拡大している。加えて最近は、新興国発の製品が先進国で売れるという現象が起きており、ノキアやLGなど、新興国に製造や研究開発の拠点を置いて成功している企業が増えている」
日本企業が新興国市場に参入するにあたっての課題としては、「本社と現地の互いの理解不足」、「市場理解の不足とコスト高」、「現地買収先と提携先のガバナンスの難しさ」、「グローバルな人材マネジメント」が紹介された。
続いて、経営コンサルティング本部 CRMグループ エグゼクティブ・パートナーの石川雅崇氏が、新興国市場であるインドと中国の攻め方について説明した。
同氏は「新興国の成長力は金融危機の影響を受けても高い。特にインドと中国の成長が著しく、2025年には、米国とともにインドと中国が3大経済大国となるという予測も出ている」と、新興国のなかでもインドと中国の成長が目覚ましいことを強調した。
中国市場とインド市場はそれぞれ異なる。中国市場の特徴として、主戦場が内陸部に移りつつあることが挙げられた。沿岸部の成長は金融危機後、鈍化しており、2級都市や3級都市が中国の経済成長を牽引しているという。
「中国の内陸部では、模倣品や粗悪品が氾濫しており、サービスや情報に対して不信感がある。そのため、商品はクチコミで広がる傾向が強い。また、価格に対しても敏感」と同氏。こうした状況を受け、各メーカーは内陸部向けの製品を出荷している。
例えば、シャープは、3,000元以上の携帯電話を6機種展開していたところ、9機種1,000~2,000元にシフトした。キリンビールもビールの価格を80円から40円に下げた。
一方インド市場は、中国と比べて都市化が遅れており、市場がより分散しているうえ、店舗の97%が家族経営と小規模経営店が多い。
「インドでは消費者の特徴に合わせた"4P"を行う必要がある。1つ目のPは、数字に敏感な国民性を踏まえての価格(price)だ。また、見て触ったうえで商品を購入する傾向が強いため、店舗でのショッピング体験(place)を重視する必要がある。加えて、若いミドルクラスはブランド志向が強いため、ブランドを意識した販促(Promotion)も大切。ちなみに、インドでCMに起用する有力候補は映画スターとクリケット選手となっている。最後のPは地域のニーズに応じた製品(Product)を提供することだ。インドでは地域ごとに言語、食文化、文化的感受性が異なるので、これらを考慮しなければならない」
こうしたことから、日本企業が中国市場とインド市場を攻める際に、「分散市場への取り組み」や「低価格でボリュームゾーンを狙った戦略転換」などが課題となる。
また同氏は、「マーケティングはマス広告だけに頼るのではなく、デジタル・マーケティングと現地で独自チャネルを構築する必要がある」と説明した。
最後に、新興国を攻める時のポイントとして、「顧客に直接リーチする」、「社会貢献で信頼を勝ち取る」、「現地で人材を採用・登用・育成する」、「データ分析をテコにする」ということが紹介された。
「ベネッセは中国で200名のセールス部隊が相談を受けながら時間をかけてサービスの説明を行い、会員の25%をクチコミで獲得した。また、ヤクルトは製品の保健機能を説明しながら、中国・ブラジルなど、世界中に3万5,000人以上のヤクルトレディを育成し、中国では黒字を達成している」
日本市場の成長が見込めないことから、グローバルを標榜する日本企業が増えている。ただし上記のように、中国やインドは先進国とは違う市場の特徴を有している。グローバルで戦おうと思ったら、市場の特徴を徹底的に洗い出し、それらに適したマーケティング活動を行う必要があるだろう。