日本IBMがグローバルビジネスの戦略を発表 - IBCSとの統合理由も説明

日本アイ・ビー・エム(以下、日本IBM)は3月1日、2010年のグローバル・ビジネス・サービス事業の戦略と施策に関するプレスセミナーを開催した。同セミナーでは、2月25日に発表された同社とアイ・ビー・エム ビジネスコンサルティング サービス(以下、IBCS)との統合についても説明が行われた。

専務執行役員 グローバル・ビジネス・サービス事業担当のランディ・ヘンドリックス氏は、「2008年から続く景気後退のなか、顧客は"ビジネスをグローバルに展開すること""コスト削減""業務の最適化"といった課題を抱えている。これらの課題を解決するために、高いイノベーションを提供し、スピーディーな結果を出すことが必要だが、コンサルティングチームだけでは不可能だ。コンサルティングからシステム構築、運用保守までを統合して提供するには、IBMとIBCSが一体となる必要がある」と、日本IBMとIBCSの統合について説明した。

IBCSの社長も務める専務執行役員 GBS事業 セクター統括担当の椎木茂氏からは、同事業の戦略に関する説明がなされた。

同社の成功している顧客は、「グローバルな製品戦略」、「グローバルなサプライチェーンの構築」、「リアルタイム経営」を実現しているという。リアルタイム経営とは、データから未来を予測し、それを経営課題に反映させることだ。

同社では、国を越えた機能化やグローバルレベルの情報一元化などを行う「Globally Integrated Enterprise」と「BAO(Business Analytics and Optimization:ビジネス・アナリティクス・アンド・オプティマイゼーション)」によって、これらの課題に対応していく。「現在が見えるだけではダメ。未来を予測しなければ意味がない」と椎木氏。同社では、BAOによってこの未来の見える化を推進していく。

さらに同氏は、「ITを所有しているとスピードが遅くてこれらの課題に対応できない。クラウドによってITを利用するというスタイルにならなければならない」と続ける。クラウド、BAOは同社が今年度注力していると公言している事業だ。

「IBMとIBCSの統合によって、顧客に対するアプローチが変わる」と、同氏は説明した。「これまでは、"コンサルティング"、"システム構築"、"システム運用保守"、"インフラ"がバラバラに提供されてきた。しかし、現在はこれらが統合された形で提供できないと、顧客に価値を提供できない。これを実現するにはチームも統合されている必要がある。これがIBMとIBCSの統合の理由だ」

また、執行役員 GBS事業 戦略コンサルティング担当の金巻龍一氏は新たな戦略コンサルティングサービスを紹介した。

同氏は、「現在、顧客が求めているものは個別のソリューションではない。グローバルな視点での課題解決が望まれている。こうしたことを踏まえ、戦略コンサルティンググループという新たな組織を設けた」と述べた。

そして、「Smarter Planet」、「業界別ホットトピック」、「IBMアセットベース」という3つの切り口から、サービスを提供していく。「これまでのコンサルティングは何から何まで浅く広く提供していたが、これからは業界に関係のあるトピックを掘り下げていく。また、当社が実際に行っている国際会計基準やグローバル経営などのノウハウも提供していきたい。加えて、当社はPwCやレノボなど、大型の合併統合を経験している。こうした経験を生かし、顧客の中に入り込んで、顧客の変革を最初から最後まで対応していきたい」

顧客に提案をする際には、従来の「提案書」を提出するのではなく、顧客とディスカッションを行っていく。同氏は、そのための工夫も披露した。

PwC Consultingの日本法人がIBMに買収されてIBCSになり、今回IBMと統合することでPwC時代のウリだった中立性がなくなるのではないかという記者の質問に対し、椎木氏は、「顧客は変わった。今は中立性よりも具体的に物事を解決してくれることを求めている。顧客を先取りする形で、われわれも変わっていかなければならない。また、インターネットの発達により、これまで経験したことのないビジネスモデルの構築が必要とされている。他社と差別化する際、未来を予測できるかどうかがカギとなる。こうしたことはコンサルタントだけではできず、統合されたチームが必要だ」と説明した。