若手アーティストたちが栃木県・那須高原各地の観光地や宿泊施設でパフォーマンスアートやファッション、音楽、演劇、ダンスを繰り広げるアート・イベント「SPECTACLE IN THE FARM(スペクタクル・イン・ザ・ファーム)」が、9月26日と27日の2日間にわたって開催された。

イベントは大きく7つのコンテンツで構成されており、時間が重なる1つを除けば、最大6つのコンテンツに参加することができるようになっている。開催にあたっては、この6つに参加できるフリーパスのほか、各コンテンツごとのチケットが用意され、チケットと宿泊がセットになったパックも用意された。

高原と宴会場でくつろぎながら楽しむ1日目

「SPECTACLE IN THE FARM」は「リバーサイド・パーク・フェス」(那珂川河畔公園)で幕を開けた。栃木県立黒磯高校吹奏楽部と快快(faifai)、ヤギによる開会式に続いて、IKEBANA、J.A.M、EGO-WRAPPIN’ AND THE GOSSIP OF JAXXが次々に登場。

開会式で演奏をする栃木県立黒磯高校吹奏楽部

開会式には那須のペンションからヤギも参加
photo by takehiro goto(ゆかい)

SOIL&”PIMP”SESSIONSのメンバーで構成されるピアノトリオ・J.A.Mは、アルバム「Just A Maestro」の曲を中心に、新曲を織り交ぜながら展開した。緩急取り混ぜたクラブジャズを、ある人はお酒を片手にそのリズムに酔い、ある人は草が生い茂る会場に寝転がりながら楽しんでいた。続く、EGO-WRAPPIN’ AND THE GOSSIP OF JAXXのセッションでは、ヴォーカルの中納良恵が登場するや否や、会場は一気にヒートアップ。「morning star」「だるい」「雨のdubism」といった近年の曲から「GO ACTION」「a love song」などのEGO WRAPPIN’時代から続く定番ナンバー、Cyndi Lauper「girls just want to have fun」のカバーなどを演奏し、EGOらしい濃密なライブパフォーマンスを見せつけた。

リバーサイド・パーク・フェスに登場したJ.A.M(左:丈青/右:秋田ゴールドマン)

EGO-WRAPPIN' AND THE GOSSIP OF JAXXのヴォーカル・中納良恵(写真下も)
photo by takehiro goto(ゆかい)

続く「宴会場劇場」は、会場を那須湯本温泉のグランドホテル 愛寿の大宴会場に移して行なわれた。第一部に登場したのは鉄割アルバトロスケットとTUTU HELVETICA。

鉄割アルバトロスケットは、著作『まずいスープ』が芥川賞候補になった戌井昭人が脚本を担当するパフォーマンス集団。小芝居からオペラ、合唱まで交えた15の演目を上演した。テンポよく進む演目は、シュールなものから笑えるものまでバリエーションに富み、参加者とともに合唱曲「チコタン」のパロディ曲「えびたん」を歌う一幕も。

続く、TUTU HELVETICAは相対性理論のヴォーカル・やくしまるえつこを中心に活動するグループ。ライブでおなじみのペットボトルの水を両手でゆっくり飲む姿や、曲の合間にぽつりと挟む独特の一言MCは健在。音源化されていない曲を続けた後に、「最後は有名なブルーベリーのお話です」と呟いて「well-known blueberry」へ。曲が終わるなり、「ばいばい」と舞台袖へ引き上げた。

第二部には、やくしまるえつことオオルタイチ、康本雅子が登場。やくしまるえつこのセッションでは、夢野久作『先生の眼玉に』ほか2篇のショートストーリーを、テルミンなどのエフェクトに乗せて朗読。

オオルタイチと康本雅子によるセッションでは、オオルタイチの楽曲「beshaby」などに合わせて、康本雅子がダイナミックでキレのあるダンスを披露。途中、康本雅子の動きに合わせてオオルタイチが踊りだすと、盛り上がりは最高潮に。満員の宴会場は歓声に包まれ、誰もがその奇跡のコラボレーションに酔いしれていた。

鉄割アルバトロスケットの演目「アマリリスというオペラをお楽しみ下さい」

抜群のコンビネーションを見せたオオルタイチ(左)と康本雅子(右)
photo by takehiro goto(ゆかい)

この第二部は、「SPECTACLE IN THE FARM」唯一のマルチトラックとなっており、同時間帯には、劇団・チェルフィッチュの岡田利規と『人のセックスを笑うな』で知られる作家・山崎ナオコーラによる「くらやみ朗読会@酩酊バー」が愛寿と同じく、那須湯本温泉の旅館・山水閣で行なわれた。