米Oracle主催の一大イベント「Oracle OpenWorld 2009 (OOW 2009)」が今年も米カリフォルニア州サンフランシスコ市内にて10月11日 - 15日の5日間にわたって開催される。新製品発表やソリューション紹介という場から、パートナーらとのコミュニケーションや情報共有の場という内容に変質しつつあるOOWだが、ここ最近はCEOのLarry Ellison氏によるサプライズ発表が毎回あったりと、何かと楽しませてくれる。今年はどのような話題が飛び出すのだろうか。

今年4月には米Sun Microsystems買収という重大イベントを通過したOracleにとって、今回は初のOOWとなる。7月には同社ミドルウェアスイートの最新版「Oracle Fusion Middleware 11g」の提供開始に続き、同社初のハードウェア製品となったExadataの後継製品にあたる「Oracle Exadata Version 2」を発表し、さらなるデータベース高速化への挑戦を続けている。このように主要な新製品やアップデートの発表はすでにOOW前にあらかた終了してしまったのが現状だ。とはいえ、豊富な製品ポートフォリオを持つ同社にとって、まだまだカバーしなければならない分野はある。

大きな話題の1つはアプリケーションと統合アーキテクチャの「AIA(Application Integration Architecture)」だ。AIAはOracleがアプリケーション分野でさらに躍進するための鍵と考えられており、既存顧客にとってもメリットとなる。OOWでは、これらアプリケーションやAIAの新版について何らかのアナウンスがある可能性が高い。また昨今ブームとなっているiPhoneなどのスマートフォンを活用したCRMソリューションや、SaaS的アプローチのOracle On Demandについても何らかの発表があるだろう。このほかの話題としては、ここまでに出てこなかった開発ツール、仮想化ソリューション、その他ツール関連でアップデートがあるとみられる。

ユーザーとして最も気になるポイントとしては、まずOracleが買収したSun Microsystemsとの関係だろう。MySQLやSolaris、サーバ製品などの既存ユーザーだけでなく、すでに買い控えという形で影響が出始めている同社の製品について、どのように既存ならびに潜在的な顧客にアプローチしていくのか、そうしたメッセージが期待されている。まずは顧客保護のメッセージを形にして出すことが何よりの特効薬だからだ。

Sunとの関係を示すメッセージの1つは、Exadataに出ている。初代ExadataがHewlett-Packard (HP)との共同開発だったのに対し、Version 2ではSunのハードウェア技術を利用している。OracleはこのSunのハードウェアでデータベースの限界突破とボトルネック打破をアピールし、同時にSunの資産がうまく活用されていることを示す狙いだ。だが一方でHPなどの既存パートナーとの関係も維持しなければならず、そうした関係のバランスと将来性について業界に示すことがOOWでは求められることになる。

以上が、今年のOOWを巡る背景と、Oracleに期待される事項のまとめだ。開催前日にあたる10日夜からサンフランシスコ市内の散策を開始したが、まさに会場設営中といった状態だ。例によって会場近辺の道路を封鎖し、巨大テントとイベント会場の設営と、街をOracle一色で塗り替えるかのごとく急ピッチで作業が進んでいる。会場横の複合商業施設「Metreon」は以前までソニーのショウルームとしての機能を持っていたが、今年になりソニーを含む大部分のテナントが撤退してもぬけの殻状態になっている。このほかにも街中には最近になり空きテナントが目立ち、不況の波に翻弄される米国事情が垣間見える。こうした状況下でOOWは数少ない華やかなイベントの1つであり、市が抱える貴重な資産だといえるかもしれない。

街中のあちこちに出現したOracle OpenWorld開催を示す街頭広告。以前に比べるとかなり大人しくなった印象はあるが……

会場付近の道路を封鎖して巨大なイベントテントを設営。開催期間中の1週間にわたって主要道路が封鎖されるためラッシュ時は大渋滞。そのため地元民にはかなり不評だが……

開催前日にあたる10日夜の様子。会場の1つMoscone Westに巨大な垂れ幕が出現

こちらは会場となるMoscone Center横にあるMetreon。その壁にもあたり一面にOOWの広告が出現。なおOOWは3つあるイベントホールを合わせても会場が足らず、周囲の複数のホテルや公園、島(!!)などを借り切って実施されている。おそらく全米でも最大級のITイベント