パナソニックは、2010年度に家庭用3Dテレビを発売する方針を示すとともに、今年度下期から、20世紀フォックス映画が配給するジェームズ・キャメロン監督の3D映画「アバター」において、共同プロモーションを展開し、製品投入を前に、3Dの認知度向上に務める姿勢を示した。

パナソニック デジタルAVCマーケティング本部 本部長 西口史郎氏

パナソニックのデジタルAVCマーケティング本部 西口史郎本部長は、「米国においては、3D映画の上映が可能なスクリーン数が、年内には5,000スクリーンに達し、日本においても、年内には250スクリーンに増えることになる。アバターは3D映画の真打ちともいえる作品であり、2009年は3D映画元年となると考えている。一方で、2010年には、アバターをはじめとする3Dコンテンツが家庭でも楽しめるようになり、家庭における3D元年がやってくることになる」などとした。

3Dテレビの発売時期や価格、仕様などについては明らかにしなかったが、「3Dは、まず映画を楽しむという領域から広がっていく。そのため、大画面モデルから3D機能を搭載し、時系列でラインアップを増やしていくことになる。3Dシステムは、既存のテレビには、後付けすることはできないため、新たに3Dテレビを購入していただく必要がある。価格は、よりお求めやすい価格を実現できるように努力する」などとした。

すでにパナソニックでは、昨年のCEATECで、103インチフルHD 3Dプラズマシアターシステムを参考展示しており、この技術をもとに製品化を図ることになる。

パナソニックが試作した103インチプラズマディスプレイテレビとBDプレーヤーを組み合わせた3D視聴システム

シャッター方式の3Dメガネ

前面にセンサーを設置して3Dメガネと連動する

試作した3D対応のBDプレーヤー

パナソニック 蓄積デバイス事業戦略室 室長 小塚雅之氏

また、パナソニック 蓄積デバイス事業戦略室 小塚雅之室長は、「HDMI1.4の規格においては、すでに3D対応が盛り込まれており、標準化は完了している。BDAにおいて、ブルーレイ規格に関する3D規格の標準化活動を進めており、遅くとも年内にはこれを決定し、来年秋にはビジネスが展開できるようにしたい」としたほか、「最適な視聴距離は、SDではインチ数の7倍、フルHDではインチ数の3倍とされていたが、3Dでは1.5倍程度が最適になり、没入感の環境で視聴することになるだろう」などと語った。

「タイタニック」のジェームズ・キャメロン監督の最新作となる「アバター」は、はるか彼方のパンドラという衛星を舞台に、最初は躊躇していた主人公が、さまざまな発見と思いがけない愛を経験し、やがて、ひとつの文明を救うための戦いに立ち向っていくというストーリー。2009年12月18日に、2Dとともに、3Dで日本をはじめ全世界同時劇場公開が予定されている。

パナソニックは唯一のオーディオビジュアルパートナーとして、最新の技術を提供し、撮影や映画製作を支援してきた。「2年前に制作現場を訪れ、3D映像に取り組んでいることを知った。キャメロン監督とパナソニックの技術を組み合わせて、3Dの世界を実現したいと考えた」(小塚室長)という。

「アバター」の制作現場でもパナソニックの映像機器を活用。65型、103型プラズマモニターを、制作スタジオおよびキャメロン監督専用の編集室で使用したほか、P2メモリカードによるテープレスのプロ用ビデオカメラ「AJ-HPX3000G」を、3D撮影前の撮影シーンの検討に活用したという。そのほか、デジタルカメラやノートパソコンなども撮影現場で活用されたという。

なお、キャメロン監督は、「3Dが近い将来、映画やゲーム、コンピュータで体験できるようになり、3Dは単に見るだけでなく、そこに入り込むことができると感じるような現実性をもつものである。2008年にパナソニックのスタッフとチームを組んだが、エンタテインメントの未来について自分の考え方に理解を示してくれた。パナソニックは家電企業として、技術の新しいスタンダードを作りだしており、パナソニックのすばらしさは家庭用の3Dの映像で見ることができる。直接にパナソニックのフルHD 3D技術を見る機会を得て、自分はその技術が本当にすばらしいと感じた。パナソニックは我々にとって、カメラの前でも後でも、すばらしいチーム仲間であり、パナソニックは家庭内でのエンターテイメントに向けた次の大きなステップを実現するのに決定的な役割を果たすと思う」とコメントしている。

ジェームズ・キャメロン監督

20世紀フォックス映画 日本代表 Jesse Lee氏

20世紀フォックス映画の日本代表 Jesse Lee氏は、「最新の映像技術と映画は切り離せないもの。キャメロン監督の創造力を、いかに画面に映すか、それを感動として、想像を越える美しさで表現するかという点で、パナソニックの技術が活躍した。パナソニックの技術との融合が、世界の映画をどう変えていくかが楽しみだ」とした。

今回のパナソニックと、20世紀フォックス映画、映画制作会社のライトストーム エンターテイメントとの提携内容は、パナソニックは、アバターとタイアップしたメディア宣伝を全世界で展開。パナソニックが開催するイベントの場で、アバターの制作チームと協力して、「アバター」の映像素材を活用したフルHD3Dの映像を紹介することで、パナソニックの3D技術力を訴求する。また、全世界で「アバター」と連動した販売促進活動を推進する。

パナソニックが1つの映画テーマでグローバルに宣伝展開を実施するのは初めてのことで、日本国内では、薄型テレビ「VIERA(ビエラ)」の今秋以降のテレビCMにおける「アバター」の素材の活用、各種イベントを実施、20世紀フォックス映画とのタイアッププロモーションを展開する。

10月6日から開催される予定のCEATECでは、パナソニックブースにおいて、フルHD 3D技術の紹介とともに、シアターを設置し、フルHD 3D映像を多くの来場者に体験してもらう展示内容とすることも明らかにした。

国内における詳細なプロモーション内容については、今後明らかにしていく予定だという。また、米国市場においては、今秋から、103型PDPやBlu-rayプレーヤーなどのフルHD3Dシアター機器を搭載したトラックを3台用意。全米を巡回し、フルHD 3D映像を体験できる場を用意する。さらに、欧州では今秋から、ショッピングモールを中心に移動型フルHD 3Dシアター3基を用意するほか、9月4日から開催されるIFAを皮切りに、展示会などのイベントにおいて、「アバター」の素材を活用したフルHD 3D映像を紹介する。

パナソニックは、今回の取り組みにより、フルHDによる3D技術の開発と3Dの普及拡大を加速する考えだ。