東レは22日、植物由来のポリ乳酸プラスチックを主成分とする「革新断熱発泡シート」を開発したと発表した。同シートは断熱材として最高レベルのF種断熱材に相当する熱伝導度(0.021W/mk以下)を達成、あわせて良好な断熱性能を数十年維持できる耐久性を実現したという。建築、輸送、家電、自動車等の断熱用途に展開することで、長期にわたる省エネ効果を期待できるとのこと。

開発に成功した「革新断熱発泡シート」の試作品

断熱性能が高い発泡プラスチック系の断熱材は、熱伝導度の低い炭化水素を石油系プラスチックフォーム(発泡体)のすきま部分に充填させることで製造するが、石油由来の材料を使用するため健康や環境面で問題があるとされる。これに対して植物由来プラスチックは一般的に炭酸ガスで発泡しにくいとされ、断熱材の材料としては適さなかったという。

同社では「マイクロ/ナノ発泡技術」を新たに開発、植物由来プラスチックと炭酸ガスを使用して98%という高い空隙率を持つ発泡体を創り出すことに成功したとのこと。マイクロ/ナノオーダーの発泡構造を精密に形成することで、気泡セル膜間の放射熱伝導、断熱材の固体部分の熱伝導、気泡セル内のガスの熱伝導を極めて小さくし、高い断熱性能を得られるとしている。また、耐久性の面ではマイクロ/ナノ発泡体を覆うフィルムに同社独自の「炭酸ガスバリア技術」を適用。フィルムの炭酸ガスが漏れないように遮断する性質を、従来のアルミ蒸着PETフィルムに対して100倍向上させたとのこと。これらの技術により、石油由来の従来品と同等以上の断熱性および耐久性を実現したとしている。

同シートは主成分が植物由来であり、製造時のCO2発生量も従来の半分以下に低減できるなど環境にやさしい先端材料との位置付け。同社では今後量産技術を確立し、2012年の実用化を目指すとしている。