国内外に事業を展開する総合商社の双日は14日、土を使用せず水の量を極力抑えた独自の植物栽培システムにより、アラブ首長国連邦(UAE)の試験設備において高糖度で品質の高い「トマト」の栽培に成功したと発表した。

試験栽培中のトマト 提供:双日

試験設備内の様子 提供:双日

同システムはUAEの財閥アルグレアグループおよび早稲田大学が直接出資するバイオベンチャーのメビオールが開発したもので、土を使用せず水の量を極力抑えた状態で野菜を栽培できるという。地面にあたる部分に保水力がある特殊なフィルムを設置。野菜と養液はフィルムで隔離して栽培され、フィルムが養液から水と養分のみを吸収して直接野菜の根に供給する仕組み。野菜は水と養分を得るために膨大な数の毛根を生やしてフィルム表面に張り付き、通常の土を使用する栽培と比べて毛根の発達が格段に優れるとしている。トマトは養液の吸収を高めるために糖分やアミノ酸などを大量に作り出すため、高糖度なものに成長するとのこと。

栽培の仕組み 提供:双日

試験設備はUAEのシャルジャー首長国に建設され、広さは480m2。双日とメビオールは共同で2009年1月に試験栽培を開始し、高温乾燥で極めて降雨量が少ない気候の中、800の株に8万個の実をつけたという。

同社によれば、地下水や淡水化した海水による農作物の栽培を行う中東では生産コストの削減が課題であり、農業用水を確保できるオアシス地域が生産の中心となっているため従来の栽培法では耕地の拡大が困難だという。同システムを導入した農業生産方法により、砂漠地帯など水資源の少ない地域でも栽培が可能になるとのこと。同社では生産方法の実用化に向けた取り組みを開始し、将来は中東の他国やアフリカ地域での事業展開も目指すとしている。