世界保健機関 (WHO:World Health Organization) が新型インフルエンザ・パンデミックの警戒レベルを「4」から「5」に引き上げた。これを受けて、Wikipediaの創始者で、「Wikia」のCEO、ジミー・ウェールズ(Jimmy Wales)氏が、「WHOの警告がレベル5になったが、メディアのパニック(情報氾濫)に惑わされるないように、『Flu wiki(インフルエンザ ウィキ)』を確認するよう周りの人たちにも知らせて欲しい」とTwitterでメッセージを発信した。

インフルエンザ情報をまとめた「Flu wiki」が開設された

ウェールズ氏は、4月26日夜(日本時間27日午前1時半頃)に「Flu wiki」開設のアナウンスと「冷静で中立な情報を求める」というメッセージをTwitterで発信している。その後の「どのようなトピックが必要だろうか?」「正確な情報提供を求む」といったコメントを出しながらのTwitterユーザーとのやりとりも追うことができる。

同氏によるインフルエンザ・パンデミック「警戒レベル5への引き上げ」ニュースを受けてのコメントが出されたのは、日本時間の4月30日早朝、5時25分頃だったのだが、これは、各メディアのネット上の報道時間ともほとんど差がなかった。なお、レベル5への引き上げを発表したWHOによる緊急会見の様子は、全米で生中継されていた。

「Flu wiki(インフルエンザ・ウィキ)」は、誰もが情報の書き込みをアップデートできる「Wiki」による特別サイトで、現在(30日朝)、新型インフルエンザの感染が報告された各国の国別情報や米国の州別情報、インフルエンザや豚インフルエンザに対する基本情報、これまでの鳥インフルエンザについてなど135の関連項目の目次が立っている。

例えば、「Pork(豚肉)」という項目では、"豚肉を食べて感染することはない"、"豚肉は加熱調理することでインフルエンザウイルスは破壊される"といった記述がある。米国で初めて新型インフルエンザ感染による死者が出た州「Texas」の項目を見ると、メキシコ国境とつながった米国南部に位置し、48州の中で最も土地面積が広い州であること。今回、死亡した1歳11カ月の幼児のケースとその発表元である「CDC(Centers for Disease Control:米国厚生省の疾病対策センター)」の情報やリンク、同州におけるその他の感染者についても、高校や小学校の名前が記載されている。

その他には、WHOを始めとする関連機関の情報をまとめたものやRSSフィード、関連のニュース一覧、CDCによる予防や対策を示したビデオストリーミングコンテンツ、フォーラムなどが用意されている。また、Google Mapを利用した「H1N1 Swine flu in 2009 (2009年H1N1亜型の豚インフルエンザ)」の感染状況を示す地図を見ることができる。

世界各国の感染状況

時間軸によるファイルもあり、世界各国での感染状況を視覚的に見ることで、27日付けで「もはや封じ込めはできない」と判断したWHOの見解を納得することができるだろう。アクセスの多い項目「TOP Content」を見ると特にアクセスが多いのは、"予防と対策"、"豚インフルエンザ"、"メキシコ"、"イギリス"、"アメリカ"、"WHO"、"ポーク"といったトピックのようだ。

Flu wikiによる新型インフルエンザへの心構えと予防

Flu wikiの「心構えと予防」の項目に記載されている内容を参考のために転載しておこう。

ウイルス流行を食い止めるために、ハイリスク認定地域以外でも対応すべきこと

  • ハグ(抱き合う)やキス、握手などのパーソナルコンタクトを避ける
  • 人混みを避ける
  • 石鹸と水を使っての手洗いを頻繁に行うこと
  • アルコール使用のハンドクリーナー(水入らずの消毒用ナプキンなど)を持ち歩く
  • インフルエンザの兆候が出たら、医療機関の診察を受け(※)、他人との接触を避けること
  • とにかく「パニックを起こさない」で冷静に対応すること

"ハイリスク"に指定された地域の住民に対しての準備として

  • 少なくとも3日間分(可能であれば3週間分が望ましい)の食料と水の確保と、塩素系漂白剤や消毒剤のストックをしておくこと
  • 鎮痛剤、解熱剤、咳止めなどの基本的な医薬品が備えてあるかの確認しておく
  • 外科手術用マスクによる保護は空気感染予防に対する効き目があるものの、効果は100%ではない。ハイリスクエリアで人混みに出なければいけない場合は、「N95マスク」についても検討すべき
  • インフルエンザの兆候が出たら、医療機関の診察を受け(※)、他人との接触を避けること
  • とにかく「パニックを起こさない」で冷静に対応すること

※感染を拡める危険、伝染する危険があるので、一般開業医外科に出向くべきではない。症状発現の48時間以内の場合の初期治療には、タミフルやリレンザの投与によって病状の悪化が軽減される(投与によってインフルエンザが完治するというわけではない)。

※日本では保健所へ連絡し支持を仰ぐように厚生省が呼びかけている。