22日の「アースデイ(地球のことを考えて行動する日)」を前にした18日と19日、環境フェスティバル「アースデイ東京2009」が開催された。同フェスティバルは環境関連のイベントとしては日本最大級で、アースデイ東京2009実行委員会の発表によればメイン会場の代々木公園への来場者数は両日で14万人と、2008年の12万5,000人を大幅に更新した。出展したグループ総数は383とのこと。本レポートではオープニングセレモニーの様子と、会場内で使用される電力をすべて自然由来のエネルギーでまかなうとした環境負荷軽減の取り組みについて紹介しよう。
オープニングセレモニーはほら貝の響きから始まった
メインステージで行われたオープニングセレモニーは、京都大学 こころの未来研究センター教授の鎌田東二氏によるほら貝の演奏で始まった。鎌田氏は「全国、また海外から駆けつけてくれた親愛なる友人たちと共に、このアースデイの祭りを心を込めて催すことができることを心より感謝申し上げます」と語り、「日本の島々が世界がそれぞれの国に根付いた安全な食の自給に向かいますように、そして世界が飢えと貧困のおそれから救われますように、一つの地球に集う我ら人と命が愛と平和に彩られた未来を得られますように」と口上を述べた。
開催にあたり実行委員会の全日本語りネットワーク+LOVE LINKの松尾嘉澄氏は「アースデイ東京は祭りです。世界のアースデイの中で、祭りとして行っているのは日本の独特のスタイルです。これは、他の国のイベントとしての開催よりも一歩進んだ形だと思っています」と話し、「祭りであるということは、祈りで始まり、祈りで終わるということです。この代々木の大地に対して祈り、このコンクリートの下には土があり、そこから水も湧いているという足下への感謝ということを含めて、この祭りを二日間過ごしていただければと思います」と大地から立ち上ってくる食や文化に対する感謝の祈りに意味があるとした。
続いて登壇した実行委員長でもある作家のC.W.ニコル氏は、「アースデイに関係している一番大きな理由は、ここに来なければ皆さんに会えないということです。いろいろな環境イベントがありますが、実践していない人がイベントをやっている場合があります。アースデイは皆さんが必死に楽しく実践していますので、これいいな、と思うものがたくさんあります」と述べ、「田舎に住んで環境とか森とか畑とか田んぼとかをやっている人たちは個性が強い人が多く、あまり人間関係が上手では無い人が多いですが、アースデイでは楽しくやっています。変人はいますが、やな人はいません」と各ブースで是非話しをしてみてくださいとアピールした。
バイオディーゼル燃料による発電で電力を供給
同フェスティバルはエネルギーの自給を目指し、会場で使用する電力供給用の発電機では回収した使用済み天ぷら油をリサイクルしたバイオディーゼル燃料(以下BDF)を使用。オープニングセレモニーや2日間で16組のアーティストが出演した「アースデイ・コンサート」が行われたメインステージの楽器、音響、照明の電力をはじめ、ブース、屋台へ電力を供給した。使用済み天ぷら油を回収して製造したBDFによる発電は、毎年実施されているとのこと。
回収は、東京地域で使われた家庭および事業者の使用済み天ぷら油を回収してBDFなどの再資源への変換を行っているリサイクルプロジェクト「TOKYO油田2017」が実施。都内数カ所に設置された回収ステーションおよび会場の同プロジェクトブースで、3月1日から4月19日の期間に家庭の使用済み天ぷら油を計1,426.05リットル回収したという。今回、回収目標を1,000リットルにした(2008年の使用量は846リットル)とのことで、目標の約1.5倍の天ぷら油確保を達成した。
また、BDFを精製するシステムを搭載した自動車「バイオディーゼルアドベンチャー号」も展示された。同車は2008年にフォトジャーナリストの山田周生氏により47,853kmを走破し、世界一周を果たしたもの。今後日本一周の旅へ出発するとのことで、アースデイ東京は山田氏の旅を応援。日本一周に必要な使用済み天ぷら油の回収に協力したという。
トークステージにはソーラーパネルから電力供給
同会場には2008年に引き続きソーラーパネルを搭載した電源車が設置され、「アースデイ・グリーントークステージ」への電力を供給した。同車は、約5kWの太陽光発電システムを搭載したキシムラインダストリーの「エコモービル」クリーンエネルギー電源車。定格発電能力は14kw/日。AC100Vで10kVAの定格出力を得ることができるとのこと。
同ステージでは、様々な分野をリードする人々・グループ15組によるトークショーが行われた。19日にはレーシングドライバーの片山右京氏を迎えて、TBSラジオ「今日よりちょっといい、明日を」の公開録音が行われた。サイクルウェアで登場した片山右京氏は「レーシングドライバーは誰よりも早く走りたいものですが、街中では信号をきちんと守ります」と環境負荷の少ない移動手段である自転車のアピールとともに、安全運転を訴えた。
水素燃料電池を搭載した最新の移動式電源車が登場
"ピース"と"スマイル"をキーワードにしたトークショーとライブを開催した「ピースマイルステージ」の電力は、純水素型の燃料電池を搭載した「移動式電源車」から供給された。同車は岩谷産業が新しく開発したもので、搭載する燃料電池の発電能力は10kW級。出力はAC100、AC200V、DC360Vの3系統を備え、各系統は同時に使用できる。専用の「水素トレーラー」と組み合わされ、35MPaの充填容器を装備。同トレーラーからの水素供給により、16時間以上の定格連続運転が可能とのこと。発電時には排気ガスの排出が無く、騒音・振動や二酸化炭素の排出もほとんど無いという。同車は今回のフェスティバルで初公開となった。
ニュースなどで耳にすることの多いバイオディーゼル燃料、太陽光発電、燃料電池ではあるが、このようなイベントで実際に稼働しているところを見て、関係者の話しを聞くことにより身近なものとして捉え、個々が"環境"を考えるよい機会になっているのではないだろうか。