セールスフォース・ドットコムは4月22日、東京ミッドタウンホールにてクラウド・コンピューティングに関するセミナー「Cloudforce Tour TOKYO "Welcome to the Real-Time Cloud"」を開催した。

同社では春と秋の年2回に分けてセミナーを開催しているが、今回は500名の想定来場者数に対して3倍以上の申し込みがあったという。会場内も活気にあふれており、クラウド・コンピューティングに対する関心の高さが伺えた。その中から、基調講演の様子をレポートしよう。

"作る""買う""使う"の使い分けが肝心

セールスフォース・ドットコム 代表取締役社長の宇陀栄次氏

基調講演の冒頭で「最近ではクラウド・コンピューティングという言葉が広がってきており、この新技術に対する皆さんの強い関心と理解を感じます」と語るのは、セールスフォース・ドットコム 代表取締役社長の宇陀栄次氏だ。特に日本は企業の大半が光ファイバーで接続している、世界有数の優れたネットワーク環境を持っており、これを活用してクラウド・コンピューティングの世界で新たなアプリケーションを実現していくという。

また、宇陀氏は「私自身、すべてのアプリケーションがクラウド上に移行するとは思っていません。従来型のメインフレームやクライアントサーバ開発などは今後も残り続けるでしょう。しかし、従来の"作る""買う"に第3の選択肢である"使う"が加わり、企業活動の中で特性に合わせて使い分けていくことになります」とも語る。

これは自社ビルを持つ一方で賃貸オフィスを借りる、社用車とは別にタクシーを利用するといった、ある意味で当たり前のように行われている手段がようやくIT業界に浸透してきたというわけだ。

セールスフォース・ドットコムではこれまで、日本全国にある2万4800局の郵便局に対してわずか3カ月でオンデマンドプラットフォームを展開するなど、数々の実績を上げてきた。しかし宇陀氏は「重要なのは私たちのサービスを採用したからではなく、お客様自身がビジネスをどのように革新したいか、どのようにユーザーを増やして大切にしたいか、といった部分に意識を集中できたことです。つまり私たちは、お客様がシステムの運用・保守・開発など付随する業務を一切行わずに済むサービスを提供してきたわけです」と、ユーザー自身の意識変革を語る。

電気やガス、水道などのインフラと同じような安定したサービスを提供し、ユーザーが本来のビジネスに集中できるよう支援を行う、これがセールスフォース・ドットコムとして捉えるクラウド・コンピューティングの本質なのである。

クラウド・コンピューティングで資源を最大活用

続いて、米セールスフォース・ドットコム Force.com マーケティング/ISV リクルートメント担当 シニアバイスプレジデントのスティーブ・ルーカス氏が登壇し、クラウド・コンピューティングが企業にどのような業務改革やビジネス方法の刷新を生むのかについて紹介した。

米セールスフォース・ドットコム Force.com マーケティング/ISV リクルートメント担当 シニアバイスプレジデントのスティーブ・ルーカス氏

ルーカス氏は「クラウド・コンピューティングでは"マルチテナント"という極めて重要な概念を使っています。これはアプリケーションやサービスを共有することであり、言い換えればインフラを共有するマンションに住んでいるのと同じようなものです」と語る。クラウド・コンピューティングは従量制課金モデルのため、企業の状況に応じて柔軟に縮小・拡大が可能。つまり、資源を最も有効活用できる最先端の方法がクラウド・コンピューティングというわけだ。