矢野経済研究所は、ユーザー企業677社を対象にした「ユーザー企業のIT投資実態に関する調査結果 2009」を発表した。それによれば、2010年度におけるユーザー企業のIT投資を分野別に見ると、SaaS/ASP、運用・保守、運用・保守アウトソーシングが2008年度と比べて伸びる見込みであり、投資傾向は従来の所有型から利用型へのシフトが進むもようだ。

2008年度から2010年度にかけての分野別IT投資額は、全体的な構成比では大きな変化は見られないものの、ハードウェアやベンダ開発/自社開発、パッケージ/カスタマイズは減少傾向にある。SaaSなどが増加する要因として、ユーザー企業がコアコンピタンスへの集中を強め、ITシステムに関しても所有から利用へのシフトを図っていることを矢野経済研究所は挙げる。

IT投資額の分野別構成比

IT投資額におけるSaaS/ASP構成比の推移を業種別に見ると、金融以外の全ての業種で増加するとみられる。最も増加幅が大きいのは公共の2.2ポイント増であり、以下、加工製造業(0.6ポイント増)、サービス(0.3ポイント増)、流通(0.2ポイント増)、組立製造業(0.1ポイント増)と続く。

IT投資額におけるSaaS/ASP構成比の推移(業種別)

情報・通信は2009年度に一旦減少するが、2010年度には増加に転じて、2008年度と同水準に回復するもようだ。2010年度の時点で構成比が最大の業種も公共(4.9ポイント)であり、金融が1.5ポイントでこれに続く。

売上高規模別では50億円未満を除く全区分で増加するもようであり、規模が大きい企業ほど増加幅が大きくなる傾向が見られる。2010年度における構成比は1,000億円以上の2.8%を筆頭に売上高規模と構成比は比例するが、50億円未満は1.0%で50億円以上100億円未満を上回ると予測される。

IT投資額におけるSaaS/ASP構成比の推移(売上高規模別)

今後SaaS/ASPは規模が大きい企業から試験的に導入を開始し、その効果が明確に認識された時点で普及のスピードが上がっていくとみられるが、それまでには相応の年数が必要になると、矢野経済研究所は推測する。