米ソニックウォール 社長兼CEO マット・マディロス氏

ソニックウォールは2月26日、都内で記者説明会を開催し、同社の事業戦略、市場における位置づけ、業績などについて説明を行った。説明会には、米ソニックウォールの社長兼CEOのマット・マディロス氏をはじめ、米国のトップが参加した。

マディロス氏は、2008年に行った事業変革として、「買収による収益の多角化」「グローバル化の推進」「競争力の差別化に投資を集中」の3点を挙げた。

同社は、2006年に電子メール関連のセキュリティベンダーであるMailFrontier、2007年にSSL-VPN関連のセキュリティベンダーであるAventailを買収しており、各社の技術を搭載した製品の提供を進めている。グローバル化の推進としては、販売拠点を世界に増やすだけでなく、中国、インドのバンガロール、台湾に技術拠点を設けたという。また、競争力の差別化を図るために、同社は予算の19%をR&Dに振り向けているほか、販売後のサポートも強化している。

同氏は、競合との差別化を図るための戦略は「技術とビジネスモデルだ」と語った。技術とは、「ディープパケットインスペクション」と「マルチコアのプラットフォーム」である。同氏は、「当社の技術の優位性は競合製品よりもスループットが10倍高いところに現われている」とアピールした。

同社が主張する「他社製品よりもスループットが10倍高い」という事実は、第三者機関による検証によって裏打ちされたものだ。「米Network World、北米とヨーロッパの第三者機関による3つの調査で、当社の製品が他社製品よりもスループットが10倍だという結果が出ている」(マディロス氏)

2008年度のサブスクリプションによる収益は全体の56%を占めており、これは前年度比17%増に当たる。同氏は「セキュリティビジネスにおいて、繰り返し使えるソフトウェアを持っていることが大切」だと指摘した。というのも、いつどのようなセキュリティ脅威が出現するかということは誰にもわからず、サブスクリプション契約を行って、定義ファイルがリアルタイムで更新できる状態にしておかないと、セキュリティ製品を持っていても意味がないからだという。「当社では、140万台のマシンで監視を行って情報を収集して、顧客が動的に製品のアップデートが可能な状態を維持している。こうしたことができている企業は少ない」(マディロス氏)

また、日本市場への取り組みとしては、「パートナープログラムの日本語化」「ユーザーインタフェースとマニュアルの日本語化」「日本向け製品への研究開発への投資」「サポートサービス機能の拡充」「現地スタッフによるトレーニング」が挙げられた。

米ソニックウォール バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー ダグラス・ブロケット氏

現在、3人の日本人技術者が米国本社にある研究施設に常駐しているという。彼らは製品のローカライゼーションに加えて、日本の顧客のサポートなども行っている。米ソニックウォールのバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーを務めるダグラス・ブロケット氏は、「日本には他国とは異なる技術のトレンドが起こることがあり、当社ではそれらを研究して製品に反映させている」と説明した。例えば、Winnyの爆発的な感染は日本特有の現象であり、同社では特化したサービスを迅速に提供したという。また、FTTHの導入は日本が先行しており、その研究がベライゾンの光ファイバネットワーク「FIOS」への対応に役立っているとのことだ。

2009年の製品開発のロードマップは、ブロケット氏から説明がなされた。UTM(Unified Threat Management:統合脅威管理)製品については、「アプリケーション・ファイアウォール」「SSL-VPN」「電子メール・セキュリティ」を強化していくという。「アプリケーション・ファイアウォールでは、コンテンツ、アプリケーション、ユーザー・アイデンティティに関するポリシーを定義することが重要」(ブロケット氏)

ハードウェアについては、ルーティングの可用性を上げるための開発が行われており、「半年後くらいに詳細を説明できるだろう」(ブロケット氏)という。

「世界のGDPが減少しているなか、当社の業績は上がっている。キャッシュと投資額は1億6,700万ドルあり、借金はない。15四半期連続黒字を達成している」と語るマディロス氏は自信に満ちあふれており、同社の好調ぶりがうかがえた。