スペイン・バルセロナで開催中の「Mobile World Congress 2009」で、米Googleエンジニアリング担当副社長、Vic Gundotra氏が基調講演を行った。Googleでモバイルアプリケーション、モバイル製品開発などを担当するGundotra氏は、モバイルインターネットを加速するための3つの視点を、デモを交えて提案した。
インターネットから生まれたGoogleにとって、インターネットは非常に大切であり、インターネットがモバイル環境に拡大することを以前から期待していたという。だが、無線ネットワークや端末側の技術改善によりインターネット対応になったにも関わらず、「これまで、ユーザーの利用はそれほど進まなかった」(Gundotra氏)。「モバイルインターネットが本当に離陸したのは2008年」と話す。
モバイルインターネットを動かす要因は、(1)データ定額制、(2)ブラウザ、(3)モバイル向けに最適化されたソフトウェアの3点であるとGundotra氏。
データ定額制について世界的に見ると、少しずつ広がっているがまだ一般的とはいえない状態だ。携帯端末からのGoogleへのアクセス数を分析した結果、データ定額制と相関関係があることは明らかという。「わかりやすく、シンプル、適切な価格のデータ定額制は必須だ」(Gundotra氏)。
モバイル環境でのブラウザに関してGundotra氏はiPhoneに触れ、「(iPhoneの)最大の功績は、本物のWebをブラウズできるWebブラウザがあったこと」と話す。iPhone(Apple)、Android(Google)、Palm Pre(Palm)のWebブラウザは、すべて同じレンダリングエンジン「WebKit」を土台にしている。これらのモダンなブラウザにより、ブラウジングが容易かつ快適になり、インターネットの利用が進むだろう。だが、ブラウザで重要なことは他にもある。「ブラウザは、コンテンツをブラウズするものではなく、(アプリケーションを動かす)プラットフォームになった」(Gundotra氏)ことだ。
プラットフォームとしてのブラウザを支える仕様が、W3C(World Wide Web Consortium)の標準「HTML 5」のデータベース、アプリケーションキャッシュ、W3Cの位置情報規格の3つで、主要なブラウザはこれらに対応しはじめている。
ここで、Gundotra氏は、テクニカルコンセプトとして、iPhoneでオフライン対応した「Gmail」を披露した。HTML 5のアプリケーションキャッシュとデータベースを利用することで、無線をオフにする「Airplaneモード」でも、Gmailを動かせる。
次にGundotra氏は、17日(現地時間)に発表した最新のAndoroid端末「HTC Magic」でGmailを動かした。iPhoneとまったく同じGmail画面が表示される。端末側が標準規格をサポートしていれば、アプリケーションは同じように動く。開発者は、さまざまな端末で動くアプリケーションを開発することができる。Palm Pre端末ではGoogle Mapsを表示させ、ネイティブアプリではなく、HTMLで動いている点を強調した。「Webというプラットフォームが台頭しつつある」とGundotra氏。
3点目のソフトウェアは、モバイルWebの普及にとって大事な要因だ。タッチ画面、マイクとスピーカー、カメラなど携帯電話独自の特徴がある。これを最大に活用するというものだ。Gundotra氏はここで、Googleが先日発表した携帯電話のGPS機能を利用する位置情報共有サービス「Google Latitude」を「BlackBerry」で表示した。"バルセロナに着いた" "レストランに向かっている"といったメンバーの位置情報を共有できる。「用途は無限にある」(Gundotra氏)。
携帯電話のマイク機能を利用した音声検索も披露した。音声認識、ハードウェアアクセラレータ、位置情報などの機能をフル活用し、携帯電話を耳に持っていくだけで音声によるキーワード検索が行なえる。
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音声検索画面 |
「pictures of cathedral in Spain」と話すと、少ししてから画像を含む検索結果が表示された |
「weather」と話すと、バルセロナにいることを認識し、バルセロナの天気を表示した |
最後にGundotra氏は、「データ定額制、モダンでパワフルなブラウザ、携帯電話ならではの特徴にソフトウェアを最適化、この3つがイノベーションを解き放つだろう」と締めくくった。