米Sun Microsystemsは2月2日(現地時間)、アナリスト向けの年次報告会「Sun Analyst Series」を開催し、同社ビジネスの現状やそれを取り巻く状況、将来の戦略プランについて報告した。サブプライム問題に端を発した金融危機で主要顧客である大手金融機関で大幅損失や倒産が相次ぎ、2008年の業績に多大なダメージを被った同社だが、同社CEOのJonathan Schwartz氏は「金融機関の統廃合で新たなチャンスが生じる。ITは依然として経済復活の鍵だ」と述べ、今後の復活に自信を見せている。

米Sun Microsystems社長兼CEOのJonathan Schwartz氏 (JavaOne 2008にて撮影)

Sunは2009年第1四半期(2008年7-9月期)の決算で16億7700万ドルの損失で大幅赤字に転落、続く2009年第2四半期(10-12月期)の決算では2億900万ドルの損失とやや持ち直しているものの、依然赤字で厳しい状態には変わりない。実際、主要顧客の1つだった米Lehman Brothersは歴史的損失額で倒産しており、米Countrywideや米Bear StearnsはそれぞれBank of AmericaとJP Morgan Chaseに吸収合併、英RBSは英国政府の資本注入なしでは倒産は時間の問題といわれている。その他大手各社も急速にIT投資に慎重になっており、これが主にハイエンド市場、特に金融セクターなどを得意とするSunの業績を直撃した形だ。

だがSchwartz氏は「厳しいながらも業界からのヒアリングで要求の増加に対する感触は得ている。今後はこういった要求に対し、どのように応えていくかがチャンスにつながる」とコメントしている。

Sunでは従来型のシステムと成長分野という新興システムの2つをビジネスの主軸に考えている。下図の左が従来型のシステムで、いわゆるハイエンドと呼ばれる分野だ。一方の右側は成長分野で、こちらはオープンソースやx64/CMTサーバなどが含まれる。Schwartz氏は「厳しいとはいえハイエンドは依然としてSunの主要事業。パフォーマンスやキャパシティ要求の増加に応えるとともに、いかにビジネスを維持していくのかのバランスが必要になる」と説明する。減少しているとはいえ、依然としてハイエンド事業は新技術分野と比較して2倍近い売上がある。

Sunの2つの注力分野。左が従来の主力事業であるハイエンド、右が現在力を入れている成長分野の新技術関連

「例えばERPの処理能力の増加カーブはムーアの法則のそれを上回っており、金融機関は何億ものWebユーザーアカウントを処理しなければならない。こうした要求は経済減速下でも変わらない。また大手同士の合併が発生することで、システム統合に対する要求が出てくる。こうしたニーズに応える技術的蓄積や適切なサービスが求められるようになるだろう」(Schwartz氏)というように、ピンチをチャンスに変える発想が復活の鍵を握ることになるかもしれない。

また同氏は、大規模IT投資は一時的に凍結された状態だが、こうした要求もあり、近い将来に復活することになるとみている。特に「データセンター」「通信インフラ」「ストレージ」「HPC」の4つがニーズの牽引役となるという。

データセンター向けソリューションはサーバやソフトウェアを含む一般的な構成だが、今後は「クラウド」に対するニーズが増えるとの予測だ。またビデオサーベイランスシステムなどの普及により、ストレージの必要容量増加がさらに顕著になる。HPCはBIやデータマイニングなどの意志決定システムでの需要を想定しており、多大なデータを処理するハイパフォーマンスサーバのほか、クラスタリングを構築できるようなシステムの必要が出てくる。「"TVを観るよりネット"といったユーザーの行動トレンドに注視し、適時適切な投資を行っていく」(同氏)