米カリフォルニア州サンフランシスコや対岸のオークランドなど、SFベイエリア地域を結ぶ地下鉄システム「BART (Bay Area Rapid Transit)」は、すべての駅と路線で無線LANによる高速インターネット接続を可能にする契約をスタートアップ企業の米Wi-Fi Railと結んだ。地元紙の米San Francisco Chronicleが1月31日(現地時間)付けの記事で報じている。同社との契約年数は20年で、2011年末までにインフラ整備が完了する予定だという。料金は月額30ドル、1日で9ドル、2時間で6ドル、年間契約で300ドルを見込んでいる。空港や周辺地域間を移動する旅行者にとっても便利なサービスとなるかもしれない。

もともとBARTはWi-Fiインターネットの実験サービスを数年前から行っており、同実験には1万6,000人以上の参加者がいたという。BARTは地下鉄であると同時に、近郊区間を結ぶ通勤列車でもある。こうした地下や100km/h超の高速区間でもサービスが問題なく利用できるようにするのが目標。同種の実験はサンフランシスコ-サンノゼ間のシリコンバレー地域を縦断する列車システムのCaltrainが実施していたが、2年前に計画自体を中止している。原因は技術的な問題も考えられるが、何より採算性などの面で目処が立たなかったことにあるとみられる。

オークランドの工業地帯を走り抜けるBART。サンフランシスコと同市街を結ぶベイブリッジの慢性的な渋滞が問題になるイーストベイ地域において、BARTは重要な市民の足だ

日本では筑波学園都市と秋葉原を結ぶ「つくばエクスプレス(TX)」で同種の商用サービスがすでに開始されているほか、2009年春を目標に東海道新幹線のN700系でサービス提供の準備が進められている。どちらもトンネルや地下、高速移動区間でも安定した通信を行えることを売り物にしている点でBARTのシステムと共通する。出張移動の多い新幹線や通勤客中心のTXという日本ならではの需要にマッチしたサービスだといえる。事情こそ異なれど、シリコンバレー企業などハイテク人間の多いBARTでも受け入れられるかどうかに注目だ。