米Ciscoは8月5日(現地時間)、同社会計年度で2008年第4四半期(5-7月期)決算を発表した。同四半期の売上は104億ドルで前年同期比9.9%の上昇、GAAPベースの純利益は20億ドルで4.4%のアップだった。景気低迷で企業が設備投資を抑制するなか、その影響を最も受けやすいメーカーの1つであるCiscoが好調な業績を収めたことが示す意味は大きい。市場ではこの決算発表を好感し、同社株価は5日の時間外取引で7%以上の水準で急騰している。

2008年通年の売上は395億ドルで前年比13.2%のプラス、GAAPベースの純利益は81億ドルで9.8%の上昇だった。このように景気低迷の影響を最小限に食い止めた理由の1つとして、同社は新興国や新規分野への進出など、リスク分散を図って市場への適応を実現していることを挙げている。例えば2008年度中、アジアを除く新興地域での成長率は19%だったと述べている。特にロシア、メキシコ、ブラジルなどの地域で、それぞれ23%、32%、48%という高い成長率を記録した。アジア地域についても中国で30%、インドで32%の成長率を実現している。欧州の13%、北米の9%、日本の5%といった水準と比較して、成長率の高いエリアの開拓を目指していることがわかる。

同様のことは、製品セグメントにも表れている。成長率がルータで14%、スイッチで7%なのに対し、セキュリティ/VoIP製品などのアドバンスト・テクノロジー分野が21%となっている。成長率の特に高い分野としては、ハイエンドルータのCRS-1(119%)、ユニファイド・コミュニケーション(51%)、アプリケーション・ネットワーキング・サービス(36%)などが挙げられる。現在Ciscoは売上の6割超をルータ/スイッチに依存しているが、こうした新規分野の開拓もまたリスク分散の一環として機能している。

一方で、今後の業績については依然として厳しい見方もある。経済紙の米Wall Street Journal(オンライン版)は5日付けの記事のなかで、通常1年の業績見通しを公表するCiscoが、今回は2四半期分の見通ししか発表しておらず、その情勢について不透明な部分があると指摘している。またCredit SuisseのアナリストPaul Silverstein氏の最近のレポートを引用して、AT&Tといった通信会社が2008年の投資を抑制し、これが結果として主要サプライヤであるCiscoに大きなダメージを与える可能性があると述べている。

こうした経済情勢について米Cisco会長兼CEOのJohn Chambers氏は「たとえ経済成長が減速しようと、われわれの長期のビジョンに大きな影響を与えるものではない。長期見通しに立って、新規分野への投資と市場への適合を進めるだけだ」とコメントしている。「また過去にもこうした危機を何度も乗り越えてきており、そのたびに市場での優位なポジションを築いてきた」と、今後の見通しと戦略についての自信を示している。