アビームコンサルティング 経営戦略研究センター ディレクター 木村公昭氏

アビームコンサルティングは、企業のBI(Business Intelligence)の活用実態について調査、このほど、その結果を発表した。全体の7割を超える企業がすでにBIを導入しているが、海外で事業展開している企業の4割が海外拠点の財務データを参照できないとしているほか、BI導入後のデータ品質について、6割が何らかの問題ありとするなど、活用度にはばらつきがあるとともに、問題点が少なくないことが明らかになった。同社は、連結売上高1,000億円を超える、東証一部上場企業、未上場有力企業(外資系含む)600社にアンケートを実施、61社から回答を得たという。調査期間は2007年12月から2008年1月。

海外で事業を展開していてBIを導入している企業35社のうち、システム上で、海外の財務データを参照することができない企業は40%、非財務データを参照できない企業は34%に上っている。海外の財務データを参照可能な企業は54%、同じく非財務データを参照可能としたのは51%だったが。これらの企業でも、その切り口は、地域別が79%、事業部別が68%だった。同社 経営戦略研究センター ディレクター 木村公昭氏は「グローバル経営を進める上で重要である製品別は37%、顧客別は26%に留まっており、このあたりが課題といえる」と指摘する。

BIを導入していても、海外拠点のデータに対応できない例は少なくない

データ品質に問題なし、とした企業は20%に留まる

BIのユーザー層は「課長/店長レベル」と、現場担当者、経理/人事/企画など「バックオフィス担当者」がいずれも69%、「部長級」が60%、「取締役以上の経営層」は42%で、活用している業務は、営業/マーケティングが82%、経理/財務が78%。経営企画が69%だった。活用している機能はレポーティングが中心で、レポーティングの活用率は、経営/マーケティングで95%、経理/財務では83%、経営企画で74%に達している。

データの品質については、「一部で問題が発生しているが業務に支障はない」が62%、「問題が発生しており業務に支障がある」は7%、「まったく発生していない」は20%となっており、BI導入企業のおよそ7割はデータ品質に問題ありと認識している。同社によれば、データクリーンアップを実行したところ、データの6割以上が重複エントリー、不要な情報、低品質なデータで占められていることがわかった、との事例すらあったという。

同社では、BIの導入で期待される効果としては、まず可視化を挙げており、レポーティングの早期化、レポート作成作業の効率化、多様な切り口でのデータ参照などができるようになる。分析的活用では、情報共有による社内コミュニケーションの円滑化、課題の早期把握による迅速な対応、問題点の原因究明による適切な対応といったことが可能となる。さらに、戦略的活用では、顧客に対する理解の深耕、効果的な思索の立案、業務プロセスの改善、新商品/サービスの開発というような、具体的な効果に結びつく、としている。

今回の調査では、多様な切り口でのデータ参照、レポート作成作業の効率化では96%、レポーティングの早期化では91%の企業が「効果があった」としており、可視化では大半が好結果になっている。また、分析的活用では、課題の早期把握で64%、コミュニケーションの円滑化で58%、問題点の原因究明で49%が効果あり、としている。しかし、戦略的活用となると、施策の立案が53%で、業務プロセスの改善は47%、顧客理解の深耕は33%、新商品/サービスの開発は11%で、この領域で効果を挙げている企業はまだ少数だ。

これらの調査結果から、同社は「可視化ができなけば、分析的活用はできず、分析的活用ができなければ、戦略的活用はできない。要するに、これらの効果をあげられるかどうかは、階層的な構造になっている」(木村氏)と判断、BI導入企業を3つの集団に分類した。可視化効果だけの企業はBIの活用度低で全体の33%、分析的活用まではBI活用度中で31%、戦略的活用ができているところはBI活用度高で36%、となる。

活用度低から活用度中に歩を進めるための取り組みとしては、「データをリアルタイム、または日次で取得」「全社的なBIツールの統一」「非定型レポートの作成や支援」「レポートの共有」といった施策が求められており、同社では、「経営トップのリーダーシップの下で、全社でBIを活用できる仕組みを整備する必要がある」としている。

さらに、活用度中の企業と活用度高の企業を比較すると、BIの効果を上げるための取り組みとして、「KPI(Key Performance Indicator: 重要業績評価指標.)の継続的改善/見直し」は活用度高企業では63%が実施していたのに対し」活用度中では29%、「ビジネス部門の協力によるBI活用方法の検討」は前者が75%、後者は43%、「KPIに対する責任分担の明確化」は同じく、44%と21%であるなど、顕著な差が見られた。このような結果から、同社は、活用度中から活用度高の段階に進化する条件は、「統合的なKPI管理を前提とした評価指標の適切な運用がポイントとなり、ビジネス部門とIT部門のコラボレーションが不可欠」とており、実効的な施策としては、BIコンピテンシーセンターというようなBIの専任組織を設置することなどを提案している。