インターネットはFLOSSプロジェクトによるシステムやアプリケーションの開発のみならず、さまざまな企業や非営利団体の協力のもとで運営が維持されている。たとえば現在のインターネットの基幹機能といえるDNSは、13あるルートサーバが実質的に要となっており、それらサーバは研究機関や企業、非営利組織によって運営されている。

DNSのルートサーバはa.root-servers.netからf.root-servers.netまでの13ある。それらサーバのIPは固定で決まっており、負荷分散と名前問い合わせの迅速な処理のために複数の地域に同じIPのDNSルートサーバが設置されている。なかでも世界中の40カ所にルートサーバを設置している最大のDNSルートサーバのひとつがf.root-servers.netだ。f.root-servers.netは日本の大阪にもサーバが設置されている。将来的には東京にもサーバの設置が検討されているようだ。

f.root-servers.netは米国の非営利組織であるISC(Internet Systems Consortium)によって運用管理がおこなわれている。同組織は米国と欧州のメンバーをメインに構成されており、日本人も参加している。ns-ext.isc.orgもISCの運用だ。ISCは以前はInternet Software Consortiumと呼ばれていた。同団体はBINDやDHCPなどのソフトウェアの開発団体としての有名。そしてISCが好んで採用しているOSがFreeBSDだ。

ISCのSenior Operating EngineerであるPeter Losher氏

3月29日、東京理科大森戸記念館で実施されたAsiaBSDCon2008に来日したISCのSenior Operating EngineerであるPeter Losher氏はISCの活動内容を紹介するとともに、どのようにFreeBSDを活用しているかを説明した。ISCではIPv6の採用も積極的に進めており、パフォーマンスやIPv6が必要とされる同組織の活動においてFreeBSDが重要な位置にあることを説明した。

ISCで提供しているコアシステムのほとんどはFreeBSDで動作しており、しかもネットワークインフラストラクチャを支えているルータはFreeBSDをベースにして開発されているJuniper Networksのプロダクトを採用している。専用のFreeBSDエディションを用意してあるなど徹底した活用がおこなわれているそうだ。ISCはもともとBSDIとともに設立された組織であるため、その流れでFreeBSDを採用しているという事情もありそうだ。

ISCのホスティングサーバのひとつ"ftp.freebsd.org"

BIND9へ移行しようというイメージ画像。ちなみに左下の墓石はBIND4を表現している

ISCではFLOSSプロジェクトを支援する目的でさまざまなプロジェクトのホスティングも実施している。*BSDプロジェクトにホスティングサービスを提供しているほかMozillaやkernel.orgのホスティング、Internet ArchiveやWikiaSearchなどのサービスも同組織がインフラやサービスの提供に携わっている。ホスティングしている中でも特にFreeBSDに関するサービスのアクセスが多いそうだが、世界中からアクセスされるFTPサーバやWebサービスはこういった組織の支援があって成り立っているわけだ。

ISCはIPv6でのサービス提供(SMTP、WWW、FTP、SSH)も積極的におこなっており、今のところIPv6でのサービス提供ができていないのはcvsupサーバのみだ。デュアルスタックでのサービスは2001年から開始され、当然DNS(f.root-servers.net)もIPv6でサービスが提供されている。同氏はIPv6のアクセスは増加しており、特に日本、フランス、北米においてIPv6のアクティビティが高いと説明した。